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3学期 by杏

   雪の御伽噺(フェアリーテイル)

彼女は一体、誰だったのだろう。

雪が降る夜に現れ、
雪が融けはじめる朝に去った。

銀色の髪と白い肌は、この世に生を賜った者と思えぬ程美しく。
身にまとうワンピースは、まるで絹のようで。
突き抜けるようなスカイブルーの瞳は、いつも微笑んでいた。

彼女がいるだけで、明日も幸せだ、そう思えた。

なのに。
僕が〝好きだ〟なんて言ってしまったから、
彼女は僕の元を去った。

雪の結晶を、枕元に置いて。

僕は、もう一度逢える日を待ちわびながら、
あの子がくれた結晶に、そっと接吻(くちづけ)る。



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