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3学期 byイェーガー

  臆病な死に神
イェーガー
 雪が降り注ぐ乾いた空気に散発的に銃(がっき)の音色が響き渡る。一発だけの銃の音色や連続した銃の音色、規則性がある銃の音色、それぞれが折り重なって一つの音楽を奏でている。でもその音楽の中に一つだけ、歪な銃(がっき)の音色が響く。その音色は他の銃の音色を寄せ付けずその音色を上書きしていく。それにより一つの音楽を奏でていた銃は少しずつ上書きされ、消えていく。他の銃はその歪な音色を止めようとするが、敵わず上書きされていく。一つ、また一つ上書きされ、最後に残っていたのは、音楽を奏でた奏者と、歪な音色を持つ銃だけだった……。
「……終わったの?」
 紅い軽機関銃を持った少女が言った。
『さあ?どうだろうね』
 その少女以外の誰かが言う。でもそこには少女以外に人はいない。通信機も持ってない。
「あなた人の気配とかわかるでしょ。それで調べてよ」
 その少女は紅い銃に向かって語りかけていた。
『お? 言ってもいいのか?』
 そしてその紅い銃はその少女の言葉に答えた。
「……やっぱりいいよ。痛い目に遭いそうだし」
 少女は紅い銃の言葉に弱気な言葉で答えた。
『その方がいいだろうよ。てかお前もうちょっとどうにかならないのか? だから臆病者の死に神と呼ばれてるんだよ』
 紅い銃はその少女を臆病者の死に神と言った。
「はぁ……うん。もういないみたい」
 臆病者の死に神と言われた少女は少し臆病な様子であたりを見回しながら言った。
『もう終わりか。呆気なかったな』
 紅い銃がつまらなそうに言う。
「もうこんなのこりごりだよ……」
 少女が疲れた声で言う。
『俺を拾ったお前の運命だ』
 紅い銃がからかうように言う。
「拾わなければよかった……」
 少女は嘆くように言う。
『まあまあ、そんなこと言うなよ。そんなことより今のうちに移動しようぜ』
紅い銃は少し真面目な声で語る。
「……そうだね。あいつらもいつ来るかわからないし」
 少女がそれに賛同する。
『ああ』
「でもどこに行こうかな……」
 少女は頭をかしげながら考える。
『南に行くのはどうだ?』
 紅い銃が思いついたように言う。
「うーん……そうしようか」
 少女は再び賛同する。
『そうしようぜ』
「ならもう移動しようか」
 少女は服に付いたほこりを落としながら言う。
『だな』
 今度は紅い銃が賛同する。
「それにしてもあいつらしつこいな……」
少女が疲れた声で言う。
『それだけお前のことを恐れてるということだろ』
「私普通の高校生だったのに……」
『今じゃ臆病者の死に神だもんな』
「言わないでよ……」
『ハッハッハッ』
紅い銃が乾いた声で笑う。
「もう……」
『まあそんなことより弾とか色々と大丈夫なのか?』
「うん。弾や他のものはまだ余裕があるよ」
『あの日とかも大丈夫か?』
紅い銃がからかうように言う。
「……これってどこもいだら喋らなくなるのかな……」
少女がそう言い紅い銃に力をかける。
『え、あ、ちょっ、やめて下さい。死んでしまいます』
「じゃあもう言わない?」
『決して言いません。ちょ、折れる折れる』
「……はぁ」
少女が力をかけるのをやめる。
『そんなにため息ばっかついてると幸せが逃げるぞ?』
「誰のせいだと……」
『誰のせいなんだろうな』
「もう……」
『そんなことよりもう行こうぜ』
「だね……行く先は……適当でいいか」
『だな。今までどおりに気楽に行こうぜ』
「私は気楽じゃないんだけど……」
『細かいことはいいんだよ』
「はあ……」
『さ、行こうぜ』
「わかったよ……」
少女と紅い銃はそこを離れる。屍を踏み越えて、赤い水溜りを避け、鎮魂歌(レクイエム)を奏でた場所から背中を向け、臆病者の死に神と歪な音色を持つ銃(がっき)が、姿を消す。








後書き
はい、一体何が書きたかったのでしょうか(二回目)。お題を決めてもらって締め切り三日前から始めたらこれ続きあるだろ、的な作品になってしまいました。どうしてこうなった。
 たぶん続きはだすと思います。これだけだと何が何なのか分からないと思うので……ではまた次の作品で。



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