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3学期 by林檎

2014年05月04日

林檎


ふわっ

ふわっ

君のほっぺたに

雪がつもる

さわってみたいな

ふわっ

ふわっ

あとがき
読んでいただきありがとうございます。
妄想ワールドが止まりません(笑)


  臆病な死に神
イェーガー
 雪が降り注ぐ乾いた空気に散発的に銃(がっき)の音色が響き渡る。一発だけの銃の音色や連続した銃の音色、規則性がある銃の音色、それぞれが折り重なって一つの音楽を奏でている。でもその音楽の中に一つだけ、歪な銃(がっき)の音色が響く。その音色は他の銃の音色を寄せ付けずその音色を上書きしていく。それにより一つの音楽を奏でていた銃は少しずつ上書きされ、消えていく。他の銃はその歪な音色を止めようとするが、敵わず上書きされていく。一つ、また一つ上書きされ、最後に残っていたのは、音楽を奏でた奏者と、歪な音色を持つ銃だけだった……。
「……終わったの?」
 紅い軽機関銃を持った少女が言った。
『さあ?どうだろうね』
 その少女以外の誰かが言う。でもそこには少女以外に人はいない。通信機も持ってない。
「あなた人の気配とかわかるでしょ。それで調べてよ」
 その少女は紅い銃に向かって語りかけていた。
『お? 言ってもいいのか?』
 そしてその紅い銃はその少女の言葉に答えた。
「……やっぱりいいよ。痛い目に遭いそうだし」
 少女は紅い銃の言葉に弱気な言葉で答えた。
『その方がいいだろうよ。てかお前もうちょっとどうにかならないのか? だから臆病者の死に神と呼ばれてるんだよ』
 紅い銃はその少女を臆病者の死に神と言った。
「はぁ……うん。もういないみたい」
 臆病者の死に神と言われた少女は少し臆病な様子であたりを見回しながら言った。
『もう終わりか。呆気なかったな』
 紅い銃がつまらなそうに言う。
「もうこんなのこりごりだよ……」
 少女が疲れた声で言う。
『俺を拾ったお前の運命だ』
 紅い銃がからかうように言う。
「拾わなければよかった……」
 少女は嘆くように言う。
『まあまあ、そんなこと言うなよ。そんなことより今のうちに移動しようぜ』
紅い銃は少し真面目な声で語る。
「……そうだね。あいつらもいつ来るかわからないし」
 少女がそれに賛同する。
『ああ』
「でもどこに行こうかな……」
 少女は頭をかしげながら考える。
『南に行くのはどうだ?』
 紅い銃が思いついたように言う。
「うーん……そうしようか」
 少女は再び賛同する。
『そうしようぜ』
「ならもう移動しようか」
 少女は服に付いたほこりを落としながら言う。
『だな』
 今度は紅い銃が賛同する。
「それにしてもあいつらしつこいな……」
少女が疲れた声で言う。
『それだけお前のことを恐れてるということだろ』
「私普通の高校生だったのに……」
『今じゃ臆病者の死に神だもんな』
「言わないでよ……」
『ハッハッハッ』
紅い銃が乾いた声で笑う。
「もう……」
『まあそんなことより弾とか色々と大丈夫なのか?』
「うん。弾や他のものはまだ余裕があるよ」
『あの日とかも大丈夫か?』
紅い銃がからかうように言う。
「……これってどこもいだら喋らなくなるのかな……」
少女がそう言い紅い銃に力をかける。
『え、あ、ちょっ、やめて下さい。死んでしまいます』
「じゃあもう言わない?」
『決して言いません。ちょ、折れる折れる』
「……はぁ」
少女が力をかけるのをやめる。
『そんなにため息ばっかついてると幸せが逃げるぞ?』
「誰のせいだと……」
『誰のせいなんだろうな』
「もう……」
『そんなことよりもう行こうぜ』
「だね……行く先は……適当でいいか」
『だな。今までどおりに気楽に行こうぜ』
「私は気楽じゃないんだけど……」
『細かいことはいいんだよ』
「はあ……」
『さ、行こうぜ』
「わかったよ……」
少女と紅い銃はそこを離れる。屍を踏み越えて、赤い水溜りを避け、鎮魂歌(レクイエム)を奏でた場所から背中を向け、臆病者の死に神と歪な音色を持つ銃(がっき)が、姿を消す。








後書き
はい、一体何が書きたかったのでしょうか(二回目)。お題を決めてもらって締め切り三日前から始めたらこれ続きあるだろ、的な作品になってしまいました。どうしてこうなった。
 たぶん続きはだすと思います。これだけだと何が何なのか分からないと思うので……ではまた次の作品で。

3学期 by勿忘草

2014年05月04日

  その先
勿忘草
“完成”を求め

“完成”のない道を

はしる

“結末”に惑わされ

“結末”のない道を

はしる

“自分”という価値

“自分”の答えがない道を

はしる

“未知”を嫌い
 “未知”のない道を
 
 はしる
 
 “完成”のないガラクタ
 
 “結末”を恐れる弱虫
 
 “自分”がない人形
 
 “未知”を嫌う過去
 
 その先
 
 そのはしった先には
 
 何が見える?
 
 何が聞こえる?
 
 わからない
 ただ今日も
 
 淡々と平凡に
 
 生きるのみ
 
 ガラクタは
 
 弱虫は
 
 人形は
 
 過去は
 
 どうなるのか?
 
 その先に
 
 何が見える?
 
 その夜は
 何をもたらす?
 
 わからない
 
 わからないから
 
 その先へ
 
 ただひたすらに

 はしるのみ


戯言

はい、皆様こんにちは。勿忘草でございます。さてさて、今回は詩のようなものを書いてみました。私の中でのテーマは“人”です。ちなみに、はしる=走るではないのでご注意を……。……はい……すみませんでした。
このような拙いモノを読んでいただきありがとうございました。
                  心からの感謝を 勿忘草

春号  By林檎

2013年09月16日
No Title
林檎

『俺達の愛は、エンドレスだろ』
 くぅー、来た! もう、ヤバいわ、この漫画の主人公の彼。私もこんな恋こないのかなぁ。そう思って鏡で自分を見てみた。
私は、細くはないが決して太い方でもない。別に顔は不細工ではなく、髪はロングのストレートだ。でも、こんな特徴も何も無い私がモテるわけがない。そう思い、少し落ち込んだ。もう少し顔が可愛かったらモテたかも知れない。もう少し体が細かったら、もう少し鼻が高かったら…………こんなことを言っていてもきりがない。うわぁ泣きそう……。そうだ! 気分転換に犬の散歩にでも行こうかな。

*   *   *
 いつものように、ウォークマンを聞きながらのりのりで、愛犬のコロと歩いていた。そうしたら向こうから、私が好きな人圭(けい)であるがジョギングして来た。
「おう」
「よ、よう」
「って、可愛いなお前の犬! 名前は何て言うんだ?」
「コロだよ」
「へー、コロって言うんだ! 可愛いな!」
「ありがとう」
 犬を笑顔で撫でている圭が可愛いよ……。
「圭こそ、何してるの?」
「ジョギングかな?」
「へー」
「って、お前、ジャンプ読むの? 何か意外だなあ……。もっと、バリバリの少女漫画を読むと思っていたわ」
 その瞬間、私の顔がカーッと赤くなった。恥ずかしい。今、死ぬほど恥ずかしい。圭くんに会ってただけでさえドキドキしている。あれだよ、今週のジャンプは、私の好きな、かっこいいと思っている漫画の主人公を、表紙にしてしまった人が悪いんだから。
「こ、これは、このジャンプは、犬の散歩のついでにお兄ちゃんに買ってきてって言われたやつだよ」
「そんなこと言って、少年漫画が好きなんだろ、お前顔が赤いぞ」
「ち、違うよ」
 圭君と会ったからだよ、とは言わなかった。
「ふーん、そう言えば俺、明日のお前のチョコ滅茶苦茶楽しみにしてるから」
 そう言って去って行った。私は、その背中に向かって、
「絶対に、おいしいの作って見せるから、楽しみにしておけよ、ばーか」
*   *   *
 バレンタインがやってきた。緊張しすぎて眠れなかった。今日、私は、圭に告白するのだ。もう、やばいよ。授業中に上の空で、怒られた。
 そして、放課後がやってきた。呼び出すことは、恥ずかしくて出来なかった。けど、二人っきりになるおまじないをかけておいたから、それが効いたんだと思うんだ。今、誰もいない二人っきりの教室の中で、私は、ドキドキしながら、
「好きです……受け取って下さい」
 と言うと、長い沈黙が続いた。そして、圭が口を開いた。
「ごめん、いきなりすぎて……。ちょっと、考えさせて」
「う、うん」
 これって私ふられたのかも。ヤバいよ、泣きそうだよ。何か、空気が気まずくなったから、私はそそくさと帰った。
 次の日、圭君は返事を、くれなかった。その次の日も、またその次の日も……。
*   *   *
 返事をくれない日が続いて、ついにホワイトデーが来た。何かあったらいいなと思って、私は、二人きりになれるおまじないをかけた。そしてまた、バレンタインのときのように二人きりになった。
「な、なぁ」
「何?」
「あ、あのさ、バレンタインの時、チョコありがとう。すっげーおいしかった」
「ありがとう」
「でさ、その時の返事延ばしてごめん。俺、やっぱりお前のこと好きだ。付き合って下さい」
「いいよ」
 そのときどこからか、『俺たちの愛は、エンドレスだろ』と聞こえた気がした。
...
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レインボーロード
林檎

「うわっ、みてみてゆりちゃん、おおきいにじだー」
その女の子は、ゆりという親友に呼びかけた。
「どこどこ?」
ゆりは必死に虹を探した。
「あそこだよ、あそこ!」
「みっけ! スゲー! あのにじわたってみたいねー」
ゆりは、そんな些細な、でも、幼い子には大きな夢を口にした。
「みかもわたりたいー! いっしょにいつかわたろうよ!」
「いいよ、やくそくね! ぜったいだよ」
そう言ってゆりとみかは指きりげんまんをした。

      *       *       *

昨日、美加(みか)という親友が塾の帰りに事故に遭った。相手が居眠り運転をしていたのが原因だ。そのせいで美加は今、病院のICUにいる。私にはいまいち、美加が事故に遭って生死の境をさまよっているという実感が湧かないんだ。今日学校を休んだのだって、病欠でしょ? みたいな感じ。いつも傍にいた親友が急にいなくなるかもしれないんだよ! そんなの信じられるわけ――――――
「ないじゃん」
なんとなく口に出して、石を川に投げた。
今日は、朝から雨が降っている。でも朝は小降りだったから、傘を置いて出てきた。だって、雨はすぐ止むと思ったもん。なのに下校時刻になっても降っている。仕方が無いから美加の置き傘を借りてしまった。
私はこれから、今日の連絡とか宿題とかを美加の家に届けないといけない。
いつもは習い事があるから無理だけど、こういう時は、「一番仲の良い子が届ける」っていう雰囲気だし。そんなことを思っていると美加の家についた。でも家には誰も居ない。何回インターホンを押しても誰もでない。
気付いたら、雨は止んでいた。やっほー雨止んだ! って心の中で叫び、美加の傘を畳もうとしたら急に後ろから、
「優里(ゆり)ー」
って、飛びつかれた。まさかと思って後ろを見たら、そこに居たのは美加だった。
      *       *       *
その日も、いつもどおり塾の帰りに駅で友達と分かれた後、本を読みながら家まで歩いていたんだ。でも今まで一度も物にぶつかったことが無かった。だけど何故か急に明るくなって顔を上げたら、いきなり車のクラクションの音がして……その後は覚えていない。何か「バイタル」とか、「骨が折れちゃってるな」とか何とか夢のBGMに医療ドラマの音声が聞こえてきたような……。
次に目が覚めたら、あの日、クラクションが聞こえた所を境に向こう側は、綺麗なお花畑で、いろんな食べ物や本などがたくさんあってまるで、天国みたいだった。
「うおー!」
とか、
「凄っ!」
と言いながら、後一歩で、お花畑に入れるってところで、後ろから
「行くなっ! 戻って来い!」
 という声が聞こえて、その声がとても悲しそうだったから、取りあえず引き返したら……。
 次に目が覚めたら、前の方に私の家が在った。そして、インターホンを押している優里も。私は嬉しくなり、
「優里ー」
と叫んだ。そして優里に飛びつき、驚いた優里を見て、出てきた言葉は何故か、
「何で、傘さしてるのよ! 雨降ってないじゃん!」
 こう言ってしまった。うっ、やばいと思って上を見ると、とても大きい虹を見つけた。
「みてみてー、優里! 大きい虹が在るよ!」
「えっ、どこどこ?」
「そこだよ!」
「あっ、本当だ! 大きいね!」
「あの虹、渡れたら良いのに」
「何馬鹿なこと言ってるのよ。虹は、光の屈折でできるものだから渡れないよ。でも……。昔、本当にそんな約束したかも!」
「えっ、覚えててくれたの?」
「うん、一応ね」
「やばい、凄く嬉しい!」
「せめて、嘘で良いから、虹の足元ぐらいは間近で見たいよね」
「私も、そう思うー」
「じゃあさ、見に行こうよ、足元を。なんか、あそこの池辺りから来てるみたいだよ」
「うん」
 私達は歩いていった。虹って言うのは、普通上から見たら円に見えるので、間近で見られるわけが無いと思っていた。

      *       *       *

 虹の足元に着いた。その池は丁度、古墳の横にあって大きい。池からは本当に、虹の足が出ている。信じられなかった。いつもは濁っている池の水まで澄んでいた。
「えっ、嘘っ」
「すごーい」
驚きで私達は、池のほとりで立ち竦んでいた。最初に沈黙を破ったのは美加だった。
「渡ってみようよ」
「えっ!」
 虹なんて渡れるわけないし、それに、虹の足元までは水の上を歩かないといけない。
「渡ってみようよ!」
「……」
「私、先に行っちゃうよ」
と言って美加が、虹の足元まで歩き始めた。私は、水の上に立ったら確実に落ちると思って、美加を引き止めようと追いかけた。
「あっ、ちょっ、待ってよ。水の中に落ちちゃうよ!」
 と言い必死に追いつき美加の肩に手をかけた。
「もう、危ないじゃん」
「大丈夫だって、今現に水の上に立ってるじゃん」
私は嘘だと思って下を見た。有り得ない、水の上だよね! もしかしたら、本当に虹を渡れる気がする。
「何ぼーっと立ってるの。虹、渡るよ!」
「う、うん……」
私は美加の横でゆっくり足を踏み出した。あっ、やばい、渡れる。
そんな私の横で心の声が聞こえたみたいに、
「当たり前じゃん」
 と言った。そしてゆっくりと虹の上を歩いていった。
 すると途中で、お花畑が見えて来た。凄く綺麗だったその中に、この世の娯楽全てが入っていた。でも、何かが違う、私がまだ行く所ではない、まだ行けない、そう思った。だから私は、
「駄目、そこから先に行ってはダメ、美加」
「えっ、何で?」
「何か良くわからないけれど、とにかく駄目だよ」
 それでも行こうとする美加に、イライラして私は美加の手を掴んで、虹を全速力で走って戻った。やばい、虹が消えてきてる。いつなくなるか分からない虹をとにかく必死で走った。
 やっと地面に着き、転がり込んだ。そうしたらいつの間にか、美加が居なくなっていた。そのときは気が付かなかったけれど、美加は最初から、病院に居たらしい。

       *       *       *

 その後、美加の意識が奇跡的に戻った。         Fin.
...
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僕の最期

                        ぶらっくありす



なぜか僕は誰かの悲鳴を聞いていた。なんなのだろう、体が異常に重く感じる。瞼が重かった。

(なんでこんなコトになったんだろう……)そう思いながら、自分の記憶を、一週間? いや、二週間ぐらい前から辿っていった。

―――――――――――― ◆◇◆ ――――――――――――――

僕の幼馴染は病気だった。

僕の名前は、安西(あんざい) 龍(たつ)哉(や)。小学六年生で、もちろん男だ。超、超、超平凡だし、頭が賢い訳でもない。いたって普通だ。唯一普通じゃない箇所と言えば、毎日病院に通っているぐらいだろう。

「あっ! 龍哉いたんだ……」

そう僕を呼ぶのは、幼馴染の 鑰崎(かぎざき) 椎南(しいな)。

小学六年生で、学校には行っていないものの、全国トップの学力。

運動神経も抜群。

華道・剣道・音楽・茶道・家庭科・図工に八カ国語まで何でもできる。それに、容姿も抜群だ。

世の中で言う、“完璧 ”な女の子だろう。

染めたものでない、透き通るほどに綺麗な金色の腰まである髪をなびかせて歩いている。

だが、結構男っぽいし、口もすごく悪い。それに、喧嘩もできる。自己紹介はこれくらいにしてと……                        

「亜里沙。どうした?」

『べっつにぃ』

そう言い、目をそらした。

「それじゃあ病室に行こうか」

『あ、あぁ』

そう言葉を交わし、病室へ……

いつも、いつも、同じ様なことの繰り返し。変わるのは、月日と、話す内容だけ……そして、病室に行き、夕方まで遊んで帰る。そんな日々が六年間も続いていた。

================================================

あれは、天気の悪い日だった。

いきなり、椎南がうちの家に来たのだった。

「えっ? 誰です『よっ、昨日ぶり~』って椎南?」

『ん? 来ちゃ悪い?』

「いやいや、悪くは……って何で? 病院は? 入院中じゃないの?」

『えーと、退院した』

……………はっ?

「なん……」

『あーもう。折角外に出られたんだから今日は、思いっ切り遊ぼー』

そう、ニッコリ笑う。

『んじゃ、公園いこっ』   

そう言って強引に引っ張って行く。公園かぁ……って、ちょっと待て。今は、雨がふっているんじゃないのか……?

「ちょっと待て。今は、雨が降っているんじゃないのか」

案の定出てみれば、バケツをひっくり返したような大雨。僕たちは、全身水浸しになっていた。

そして、顔を見合わせた。二人とも、自分たちがあまりにも、変な格好だったので、爆笑した。すごく寒くて、夏なのに凍え死にそうだったけど、楽しかった。

だが、その次の日に風邪をひいたのは、もちろん言うまでもないと思うけどね……。そして、後から椎南に聞くと病気は治ったらしい。僕は結構ホッとした。

            ***

 そこまで思い出したときに頭に激痛が走った。

そして、コンクリートの冷たいあの感覚からベッドの優しい温もりに変わり、少しの安堵感が生まれた。そして、なぜこうなったのかを思い出したいという気持ちに駆られ必死になった……。  

            ***

椎南SIDE 

 五日後、この町で花火大会を兼ねた夏祭りがある。そこまで『花火』は興味が無かったが、私は『夏祭り』が好き。

なぜかって? だって楽しいじゃない! 食べ物があふれてて、私の、楽園だッ!…………。

すいません……調子乗りすぎました。ごめん……nasai.。

でも、なぜか龍哉は、嫌いみたいだ。なぜなんだろう?

まあいっか。あっそうだ。浴衣買った方がいいのかな……?

龍哉SIDE

僕は、夏祭りが嫌いだ。だって、苦しいんだ。何が苦しいかって?

それは、人ごみで、呼吸がしにくくなるんだ。僕は、脈拍が百五十もあるから、すぐノイローゼになる。

そのコトを、椎南は知らない。というか、知られたくないんだ。これは、僕の家族しか知らない。

だから、椎南と一緒に夏祭りは行きたくないんだケド……。来年からは、絶っっ対ぁーーーーーーーーーーーーい、一緒に行かないからな。

―――――――――――― ◆◇◆ ――――――――――――――

龍哉SID

 今日は、夏祭りの日。椎南との待ち合わせ場所に行ってみると、もうすでに、椎南は来ていた。

「あっ、椎南」

『もう、遅いよ。約束の時間から、三十秒も遅れてる』

「ごめん、ごめん」

『しかたがないなぁ。今回だけだよっ。』

そう言って椎南は、笑みを浮かべた。

「んじゃ、もうそろそろ夏祭り行こうか。早く行かないと人が一杯になるよ」

『うん、そうだね。』

そう言って二人で歩き始めた。

  ………………………

「うわぁ、案外人がいるね」

『うん。まぁ、そりゃぁそうでしょ』

「さっ、行こうか」

そう言うと、

『さっ、最初はわたあめからねっ』

「えっ、もう食べるの?」

と、呆れたように言うと、

『いいから、行くよ』

そう言って、僕の手をぐいぐい引いて、歩き始めたというより、むしろ走るように進み始めた。

「待ってよ、椎南」

と言い、僕は無我夢中で付いて行った。その後の椎南は、いろいろなものを買った。

『次は、たこ焼きね』

といい、それを買い食べ終わると、

『次は、りんご飴ね』

『んじゃぁ、クレープ』

『次は……お好み焼き』

『龍哉、早く。から揚げ食べたい』

『えーと、チョコバナナ』

『ポテトフライ』

で、終わった。

「椎南行こうか」

と、言ってみるけれどいない。

「椎南?」

そう言って辺りをきょろきょろ見回すと…………あっ、あそこにいた。椎南は、中学生ぐらいの、いかにもヤンキ―ですみたいなやつに絡まれていた。

「おい、椎南を、離せ」

とその、男達に言うと、ニヤニヤしながら

「やーだね」

「お前、この女を返してほしかったら、俺らと喧嘩しようぜ。いいだろ?」

僕は、このとき決心をした。

「いいよ、やってやろうじゃないか」

これが、このときに出たコトバ。

「椎南、早く逃げろ」

『はい…………』

「早く」

『……ありがとう』

そう言い逃げる椎南。そしてとうとう、

「やるぞ」

喧嘩が始まった。

――――――――――― ◆◇◆ ――――――――――――――

「なんだよ、チビ。もうできないのか?」

そう言われ、鉄パイプで頭を殴られる。

「あぁー、つまんねぇ」

そう言い、男達は、去っていった。

***

あぁ、そういうことだったと、思いながら、僕は……

静かに目を閉じた。

「…………椎南…………」 

と、つぶやきながら。その後、僕が目を覚ますことは……

――――――――無かった、―――――――――――――――――



                             完

ぶらっくありす

2012年05月30日
ぶらっくありす作

『僕の最期』