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壱潟満幸

2012年04月28日
壱潟満幸作

神になれ!1
神になれ!2
神になれ!3
神になれ!4
ランチとおやつ1
ランチとおやつ2
厨二恋文
冬のある日
ホ ン ト の キ モ チ(girl side)


希宮春風

2012年04月28日

たまごサンド

2012年04月28日
たまごサンド作

助兵衛

2012年04月28日

2012年04月28日

コラショ

2012年04月28日
コラショ作

イルカ

2012年04月28日

星屑

2012年04月28日
星屑作

トム猫

2012年04月28日

白狐

2012年04月28日

今日春号の製本が終わりました。図書館に置きます。限定十数部なので欲しい方はお早めにー(@゜▽゜@)もし貰えなくてもそのうちここに載せる予定です。
Byさつき...
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おおつきけんじのにっき(2)(back



あれ? 目覚まし時計かと思ったら救急車の音じゃないか。まったく、人が気持ちよく寝てるのに・・・・・・ってなんで僕が運ばれる? 生年月日とかなんで聞かれてるの? わっけわかんない・・・・・・ここがどこか? 家に決まっているじゃないか。いや、校庭だ。なんでだろう・・・・・・むむ、何故だ、謎は深まるばかり・・・・・・


「・・・・・・解離性障害と言われるもので・・・・・・ショックを受け・・・・・・ええ、記憶喪失と・・・・・・多分、戻らないでしょう・・・・・・」

ふっとまた意識が飛んで、目覚めた時には白い壁、白い天井。薬品の匂い。明らかに病院だ。医者の声が聞こえる。僕の親と話してるのかな・・・・・・何でこんなところにいるんだろう・・・・・・。何か病気にでもなったのだろうか・・・・・・別に辛くはないのだが・・・・・・。

というか僕は何をしていた? 直前には・・・・・・あれ? えーっと・・・・・・ダメだ、すっかり忘れてる。そういえばさっき、かいりせいとかなんとかいっていたな、あと記憶喪失がどうのとか・・・・・・。ふむ、状況的に僕は何らかの原因によって記憶喪失少年になっているわけか。なるほどなるほど。まあ納得は出来てないけど、理解はした。問題はその原因ってなんだということだ。そこが唯一にして最大の謎であろうに・・・・・・。

「賢治? ああ、よかったぁ・・・・・・何があったか覚えてる?」

母さんだ。何があったかなんて、僕が一番聞きたい。

「僕はなんで・・・・・・?」

「ああ、いい、いい。今は何も言わないで」

抱きしめられた。不覚にも安堵を感じる。やっぱり親というのはいくらウザく感じようと親なのだ。なんとなく思った。思春期って複雑だ。

「何があったのか、思い出せるかい?」

医者が聞いてきた。母さんが何も言わないでいいと言ってきた直後だというのに、まったく・・・・・・無神経な医者だ。でも素直な僕は正直に答える。

「えーっと・・・・・・僕が帰りの会を終えて・・・・・・図書室に入ってそれで・・・・・・がっ・・・・・・!?」

耳鳴りがする。頭が痛い。割れるんじゃないかというくらい。そして声が響く。思い出すな、そこから先は。思い出したらダメだ! お前が壊れてしまうだろう! やめるんだ、思い出そうとするなんて自滅するだけだ。とっとと忘れてしまえ!

「大丈夫かい?」

「・・・・・・ええ・・・・・・なんとか。でもそこから先は覚えていません・・・・・・」

「そうか・・・・・・一応現在の状況を説明しておくとね、」

僕は、図書室で倒れていたらしい。司書の先生が職員室に連絡を入れ、救急車を呼んだそうだ。司書の先生が言うには一人の女子生徒がその場にいたらしい。名前は***。僕と同じクラスなんだとか。全然名前を聞き取れなかったけど。名前を言われた瞬間、貧血を起こしたみたいに目の前真っ暗になってまた声が邪魔する。そんなに聞いたらダメなのかな。僕の精神はおかしいのかな? 

 いくつか検査を受けて僕は数日後に退院した。帰るとき、母さんがいつもはいかないようなファーストフードの店でお昼を食べようと言ってきた。僕が常日頃から行きたいとせがんでいた店だ。なんというかこういう店って憧れるものがある。

 ただ、実際入ってみて幻滅した。ただ味が濃いだけのような気もする。これなら母さんの料理の方が美味しい。数百倍もだ。僕もようやく親に感謝できるようになったのだろうか。成長かな、これは。思春期なのに、おかしいね。第二次反抗期なのに。

 さてっと卒業式には間に合ったし、なんか一人転校したらしいけど名前は例の如く聞こえない。運命は今日もご都合主義。まあ運命だし、仕方がない。次に待っているイベントは中学の入学式。ちょっと不安。新しい世界とは恐ろしい。でもきっと楽しいのだろう。

 卒業式で貰ったアルバムを見る。写真映り悪いなぁ、僕。・・・・・・ん? この、女の子。一人は盲点が発生しているみたいになるんだけど、もう一人。何年生のクラス写真を見てもいる・・・・・・もしかしてずっと同じクラスだったのかな。名前はっと・・・・・・『小早川(こばやかわ) 鈴音(すずね)』・・・・・・聞き覚えがあんまりないなぁ・・・・・・ずっと本を読んでるおとなしい子だったりしたのかなぁ、僕も本好きだから友達になればよかった。どこかでまた会えたらいいな。

 実は僕らの住む地域には中学校が二つあってどちらになるかは抽選になる。さっき貰った書類に一覧があったはずなんだけど・・・・・・残念、彼女は僕と違うようだ。こういうところにも運命の作為的なものを感じる。恨めしいね、ご都合主義の運命さん。

 

             どこかの物語に続いているかもしれない

   おおつきけんじのにっき

風船犬 キミドリ

 皆さん、初めまして。僕は悩める小学二年生の大槻(おおつき) 賢治(けんじ)です。名前が歌手っぽい以外はどこにでもいるふつーの小学生。悩みも片思いなどというものだから、本当に平々凡々、無個性の、空気君だ。・・・・・・ごめんなさい、どうせ僕はいらない子です。

 まあ、ネガティブな発言は置いておいて、僕のガキっぽい悩みを聞いてください。まあガキなのだから許してくれますかね。

 僕の片思いの相手は、去年同じクラスで今年も同じクラスの見た目はかなりおとなしめの女の子だ。読書が趣味のようで、いつでも本を読んでいる。そう、授業中でさえも。

「ねえ、本城(ほんじょう)さん。何度言ったらわかるのかしら。先生はね、貴方だけのために授業をしてるわけじゃないのよ。貴方は皆の時間を盗んでいるの。貴方は皆に時間を返せるの?」

ああ、また怒られている。今週で何回目だろう・・・・・・。

 僕の片思いの相手、本城 稟(りん)は無類の本好きで、本を読むためならばなりふり構わないらしい。それにしても先生も二年生に対してキツくないですか、必死ですね。でも彼女にとってはヌルい攻撃のよう。

「お言葉ですが先生、」

ざわっ。クラスの空気が緊張する。この言葉が彼女から発せられると頭の中に警報が鳴り響く。普段は先生を無視している彼女がこの言葉を発する時は・・・・・・反撃の時間だ。

「先生は私一人だけのために授業をしているわけではないとおっしゃいましたね。では、今の私の行動に対するご指摘は、私以外の三十五人の時間を先生は私に使ってされているという見方もできるのではないでしょうか。

いや、そもそも先生は私を含む三十六人の時間を先生の仕事のために奪っているという考え方もできるはずです。ならば先生こそ私へ注いでいる三十五人の時間を生徒へ返す義務が生じるのではないでしょうか。いかがでしょう、授業を再開されては」

傍(はた)から聞いていたら滅茶苦茶だ。でも、この先生は神経質でヒステリックなことで名高いからきっと言葉の半分も頭に入っていないのだろう。なんという屁理屈。えらそうな口調。でもそこがたまらない。先生の特性を理解しているからかなり力を抜いているのだろう。僕でさえも穴だらけと分かる理屈。でも、素晴らしく効率的だ。そんな彼女を一度でもいいから言いくるめてみたい、というのが目下の目標だ。・・・・・・お前には無理だとか思わないでください。僕だって、僕だって頑張っているんです! 彼女の好きそうな本は片っ端から読みあさり、知識や語彙を蓄えて、いつも万全の状態で彼女と話す――準備は出来ているんですけどね・・・・・・。まあ僕はヘタレです。彼女とは目を合わせたこともない。とても愛らしく、何時まで見ていても飽きないような造形なのに。僕には彼女と並んで歩く勇気もない。

 一応僕の容姿も描写しておきましょう。これを読んでいる方がアドバイスをくれるかもしれない。

 身長は百四十センチ弱。二年生にしては高いほう。痩せ型で髪型は普通の小学生っぽい感じ。いや、どんなのが普通かわからないけど。おかしな髪型をしているわけではない、と思う。眼鏡はかけていない。まあ不細工ではないしカッコイイとまでは言えないが造形はそこそこなんじゃないかと思っている。こういうのってなるしすとって言うんでしたっけ。最近知ったのでよくわかりません。

 そんなに悪くないからこそ、無個性の空気君。ちなみにあだ名は「幽霊」・・・・・・せんせー、これはいじめじゃないでしょうか。周りの子が言うにはいつの間にか背後に現れるから怖いらしい。気がつかないのが悪い! 

 勉強も運動もそこそこできる。楽器とかもなんとか。そう、僕は器用びんぼうというやつなのだ。特筆してできることなんて・・・・・・あれ? 本当に見当たらない・・・・・・無個性ばんざーい。

 このままいくとじちょうとじぎゃくのすぱ、すぱいらる? だと思うのでやめておきます。

 さあ僕にアドバイスを下さい。彼女に話しかける勇気も一緒に! ・・・・・・人任せはダメですか・・・・・・頑張ります・・・・・・





 その一、図書室にいる彼女に話しかける

 勢いに乗せられて挑戦しようと思います。窓際に座る彼女をそっと観察する。うむうむ、可愛らしい。ってこんなことしてたらスニーカーとか言う人等みたいじゃないですか。あれ、ストッカー? あれあれ?

 まあそのへんは置いておいて、適当に本を借りる。かもふらーじゅとかいうやつです。うあーきんちょーする・・・・・・

「あ、あの・・・・・・」

ぎゃー、話しかけてしまったー!!どうしよどうしよ、何も話題とか考えてないんですけど、どうなるの!

「なに?」

「え、えーっと、あの・・・・・・」

な、何か適当に・・・・・・

「今日一緒に帰らない? ほら、帰る方向一緒だし。何か話したりしたいし」

勝手に口が回る回る。滑らかに自然な口調で言葉が波のように出てくる。

「え・・・・・・あ、いいけど・・・・・・たしか大槻くんだよね?」

意外に口調はふらんくのようだ。何かおいしそうな響き。

「うん、クラスは去年も同じだよ。ところで、どんな本を読んでるの?」

なんだ、僕は。天ぷらでも食べたのだろうかというほどにつるつると言葉が出てくる。

「えーっと、これはグリム童話。結構怖くて気持ち悪い表現が多くて・・・・・・でもなんかクセになるというか。変・・・・・・かな?」

「いや、そんなことはないよ。確かにシンデレラとか怖いけどね・・・・・・。でもおかしな趣味じゃないと思う。僕も知っているしねって僕と一緒にされても嬉しくないか。あはは・・・・・・」

うう、最後は情けなく笑ってしまった。ふざけたやつと思われなければいいのだけれど・・・・・・。

「本当に!? よかったあー、私だけかと思ってた! 仲間だねっ」

なんということだ! あれだけ迷いまくって失敗する可能性を危惧してその一とか言っていたのにあっさり成功してしまいました!

 というかこれで僕は勝ち組ですね、皆さん! 僕にはもう友達がいる!

「僕も仲間が見つかってよかったよ。僕って本を読むくらいしか趣味がないから・・・・・・これからよろしく!」

自然に手を伸ばす。目の前に差し出された僕の手を、少しびっくりした顔で握り返してくれる彼女。なんて細くて柔らかい手なんだろう。

 



幽霊から勝ち組に昇格した僕。その後、彼女とは毎年同じクラスになり、ますます運命的な絆を感じます! そう、彼女と僕はなにか人智を超えたものでつながっているに違いない・・・・・・なんてね。

 小学六年生の春、またもや彼女と同じクラスであった。なんだか都合が良すぎて笑えてくる。なにせ僕は一週間後に卒業式を控えた今日、彼女に告白するのだから、これほど都合のいいこともない。そして僕は真の勝ち組となり、中学デビューを華々しく飾ろう! という下心しかないわけですが・・・・・・思春期ということで一つ。

やっぱり緊張する。これだけ緊張したのは彼女に初めて話しかけた小学二年生の時以来だ。彼女が教室に入ってきた。告白するのはありきたりだけど放課後で、図書室。彼女との一番の思い出の場所だ。今日も来るはずだからわざわざ言わなくてもいいだろうか。いやしかし思わせ振りに言っておいたほうが彼女の方にも心の準備時間を上げられるし・・・・・・いや! 言わずに一発勝負だ! ・・・・・・まあ今から緊張しっぱなしで話しかける勇気がないだけでもありますが。ふぅ・・・・・・。

いつまでたっても僕はやっぱりヘタレのようで、この気持ちを伝えるのにもここまでウジウジと引き伸ばしていただけだし。でも、きっと中学へ行ったとしても、告白するのだろうから、今、このキリのいいところでけじめをつけておかないと。これで僕の心がもっと強くなってくれれば僥倖(ぎょうこう)。どうにもならなくても、玉砕したという経験自体が僕の栄養となってくれる。さあ、前向きに考えようじゃないか! 明るい未来が待っているはず!

なあんてことを一日考えていたもんだから授業なんて一言も聞いてなかった。そんな日もあっていいんじゃないかな。思春期ですから。免罪符にしてるわけじゃないけど、この年頃の時の行動なんてそんなものではないかと。

そして時間が飛んだのではないかと思うような速さで放課後になっていた。てこてこと平常心を保てと言い聞かせながら図書室へ。彼女は返す本があるとかで先に図書室へ走っていった。可愛らしいことだ。図書室では教室での冷たい態度とは打って変わり、素直であどけない表情を見せてくれる。なんというかもう、僕にとっては本当にかけがえのない子なのだ。これで振られたりしたら・・・・・・いや、考えるまい。考えたところで足がすくんで動けなくなる。ポジティブシンキング!! 大丈夫、僕はカッコイイ! ナルシストとかじゃないけど! いけるはずだ。

とはいいつつも手が震えるし、冷や汗が止まらないし、もう今にも倒れそうだ。怖い、でも言わなくちゃ。僕にできることはと言えば、好きだと一言言うくらいなんだから!

 「失礼しまーす」

一声かけて図書室に入る。ふむ、司書さんもまだ来ていないようだ。これは好都合。運命は僕の味方だ。思えば一年生の時、彼女と同じクラスになれた時から僕は運命に愛されているに違いない。運命もご都合主義なものだ。

「待ってたよ、賢治くん」

いつもの窓際の席に座り、ふっと微笑む彼女。それで緊張が消えた。今なら言える。今しかない。

「あのさ、稟・・・・・・」

「ねえ、賢治くん。卒業前に、言いたいことがあるのだけれど、いいかな?」

何故か彼女にも言いたいことがあるらしい。先に言ってもらおう。

「実はね、小学二年生の頃、賢治くんに話しかけられてからその・・・・・・なんかよくわからないのだけれど・・・・・・」

あれ? これ、僕の言いたいこと言われそうなんじゃ・・・・・・。僕の気持ちも伝えなくては・・・・・・

「がっ・・・・・・!?」

壁に頭をぶつけた。否、ぶつけられた。彼女に突き飛ばされたのだ。

「え・・・・・・何、なんで?」

自体が飲み込めない。目の前がぼやける。目の前に星が飛んだ気がする。本当にあるんだなあ、そんなこと。

「・・・・・・冶くん。貴方のことが大好き。ねえホントに好きなんだよ」

体を引きずられる。そして抱きかかえられた。首に彼女の細くて柔らかい、あの時と同じ手が添えられる。

「ぐっ・・・・・・!?」

「本当なんだよ。大好きで仕方がないの。ねえ賢治くんは? 私のこと好き? ねえ、答えてよ。お願いだから。好きって言って・・・・・・」

彼女が何かを叫んでいる。徐々に暗くなる意識を必死に保ちながら、一言だけ。

「好き・・・・・・だよ・・・・・・」

「本当? 嘘じゃない? 絶対に、本当に好きなの? 私のこと好きって言った?」

ぐっと手に力が込められる。もう一言も声が出ない。

「はな・・・・・・して・・・・・・」

無理やり搾り出した声はかすれた雑音にしかならず、狂気の色に彩られた彼女には届かない。あ、これは死ぬかもしれない、呑気にそんな考えが過ぎる。でも死ぬわけにはいかないだろう。だって僕はまだちゃんと彼女に気持ちを伝えていない。

 必死に彼女の手を引き剥がそうとする。さすがに小学六年生ともなれば男女に力の差が出てくるわけで。でも彼女はリミッターが外れている、つまり人間の出せる最大限の力を使っているわけだ。これは勝ち目ないかもしれない。

「ぐぎぃ・・・・・・」

呻く、必死に。それすら命懸けなのだと気がついた。仕方がない、彼女を傷つけたくないが、こうするしかない。

「ぎ・・・・・・がぁあ・・・・・・!」

必死に体を横に転がす。僕の首に捕まる彼女も一緒に転がる。ごろごろごろごろ。少し楽しいかも。こんな時じゃなければの話だけど。

 転がっているうちに、彼女の力が弱くなってきた。一気に引き剥がす。そしてそのまま無様ながらも後ろへ飛び退く。まずは彼女から距離を取らないと・・・・・・。

「ぜぃ・・・・・・げほっ・・・・・・」

咳き込む。目がチカチカして頭がグラグラする。ひどく重い。どくんどくんと耳元で血の流れる音がする。必死に顔を上げると彼女が少し遠くの本棚の下でうずくまっている姿が見える。そしてゆらりと立ち上がり、こちらを見上げる。これは、逃げなくてはいけないかもしれない。言っておくが、僕は彼女のことが今この状況でも好きだ。ただ、今殺されるわけにはいかないだけだ。生きないといけない。僕の奥で声が叫ぶ。生きろ、生きろと叫ぶ。さあ、彼女に背を向け逃げるんだ。早くしないと手遅れになる。早く助けを呼べ。何をやっている、早くするんだ! ・・・・・・そんなこと言うなよ、僕だってまだ事態をよく飲み込めていないんだ。そんな状況に立たされて、冷静な判断なんてくだせない! だから逃げろと言っている! 嫌だ、彼女をおいて、気持ちも伝えずに逃げるだなんて。そんなことは僕が僕に許さない! じゃあ許さなくていい、とっとと逃げ出せ!

「黙れぇえええ!!」

内に響く声を無理やりかき消す。黙れ、僕は彼女に言うことがあるんだ。逃げてたまるか。いいか、よく聞け僕、これはな、五年がかりの恋だ。それを首絞められたくらいで・・・・・・いやまあ大変だけど、それでも諦められるか! なんかさっきのやりとりでは彼女も僕のことが好きらしい。それでも諦めるのか。なあ、諦めていいのか? 

「いいわけあるかぁああああ!!」

いや、叫ばなくてもよかったよ!?彼女も怯みかけだし。でもまあ、この勢いで、言ってしまうのも悪くないんじゃないか?

「稟! 小二の頃から好きなんだ! でもな、僕は凛のことが今は怖くなっている。でも好きなんだ、だから!」

元の優しい君にもどってくれ、と叫ぶつもりだった。でもその時、図書室に僕と彼女以外の人影がはいって来ていたのに気がついた。司書の先生だった。

「ふ、二人とも? 何をしているの・・・・・・!」

司書の先生は、職員室に内線をつないだ。先生を呼ぶつもりなんだろう。その時、彼女が急に走り出した。僕に向かってくるつもりかと思って身構えたが、彼女は図書室の出入口へと向かっていた。

「こらっ、待ちなさい!」

司書さんが叫ぶ。いや、そう言って待つ人を僕は見たことがない、なんて無意味な。僕の予想通り彼女は一瞬のためらいも見せず走り去った。それを見届けると、ぐらりと視界がひっくり返った。なんで本棚が壁から生えているんだろう? ああ、僕が横になっただけか。あっはっはっはっは・・・・・・

 笑うしかないだろ、こんなこと。何故か告白しようと思った女の子から首を絞められ殺されかけただなんて。これは本当に現実? 嘘だと言ってよ、せにょりーた。いや誰だよ、はっはっは・・・・・・ふう・・・・・・。さて、自失するのはもうやめだ。これからをどうにかしなくちゃ、僕はまだ生きているのだから。でも、今は・・・・・・眠ろう。明日、明日の朝になったら考えよう。彼女のことも、これからの僕のことも。朝になったら、きっと・・・・・・
続き

春号 By魅烏

2012年04月26日
厨房にて

魅烏

「ばんの~ほ~ちょ~さ~ん! 私、新作思いつきましたよ~」

何か遠くのほうから叫び声が聞こえてくる気がするが無視だ。あいつの新作にはろくなものがないからな……できればあの間延びしたしゃべり方もやめてほしいところだが本人に間延びしているという自覚がないのだから仕方がない。そして今願いがかなうのならあいつがどこかに移転されてほしいな。あんなのと四六時中顔をつき合わせているこっちの身にもなってほしいものだ。なのにスポンジときたらかわいいからいいじゃん、とろくに店長に話もつけてくれないのだ。

「み~つけた。ここにいらしたのですね!」

しまった、こんなことを回想している間に見つかってしまった。そろそろ自己紹介をしようか? 俺は万能包丁その人だ。君たち読者はあれ、 包丁がしゃべるの? などといぶかしむかもしれんがこの世界においては常識である。姿形だって君たちとさほど変わらないと思うぞ。たとえば俺は、葡萄みたいな紫とも青ともつかない変わった色の髪(若干前髪が長くてウザイ)に身長一八〇センチといった体である。確かにでかいが、これは調理器具だからではなくただ単に成長しすぎといったところだ。ただひとつ違うことと言えば、俺たちは調理器具に変化(へんげ)することができる。家系としてみんなそうだから遺伝とかなんかあるのだとは思うが、難しいことはわからん。学者に聞いてくれ。で、さっきから変な声を出しているのは抗菌まな板。つい先月入ったばかりの新入りだ。今までは昔なつかしの和食料理店でよく見るようなまな板の爺さんだったんだが、定年退職して新しくやってきたのがこのプラスチックの小娘だ。知ってのとおりまな板と包丁は一緒にいなくてはならない。早く辞めてもらいたいのだが、店長が気に入っているから仕方がない。店長とスポンジの説明もまだだったな。スポンジは俺の幼馴染で調理道具のリーダー、そして店長は俺たちのマスターだ。おれたち調理器具はマスターの指示のもとで変化する。簡単にいえば力が暴走しないためらしい。つまりマスターの許可なしでは俺はその状態のまま何もできない。で、俺はこのコスプレ喫茶「ミスター」の厨房で働いているためマスターはマスターとは呼ばれず店長と呼ばれる。

「おっ、まーちゃん! 勉強熱心だな~感心、感心♪」

噂をすれば何とやら店長のご登場だ。君たちがいるのとは別の世界もとい時空であるここでは良く見る薄桃色の髪に出るところは出て閉まる床はしっかりしまっているという大人な人である。とても十七歳には見えない。まあ、だからこそ店長という職業もこなせるんだろうなぁ。ちなみに店長はコスプレ喫茶ということもあり制服姿である。

「えへへ~そんなこともありませんよ~」

と頬を染めながらまーちゃんと呼ばれた抗菌まな板がにへらにへらと笑う。それでいて金属類(鍋やフライパンなど)には人気があるから世の中何だか分からない。背中の半分ほどを覆う蜂蜜色の髪を緩く三つ編みにした頭が俺の胸辺りにある。これでいて実は俺より年上のオバ――

「何ですか?万能包丁さん?私はピッチピチの女子高校生ですよ?」

顔に出ていたのであろうか。禍々しいぐらいの満面の笑みで否定された。逆に認めているようなものだな。というか自分でピッチピチとか言わないで欲しい。まあ、後々面倒だから黙っておこう。

「それで、新作は?」

それていた話を元のレールに戻す。本当は聞きたくもないのだが。

「忘れていました! これですよ。マーちゃんすぺしゃるナンバー一四三ネバネバネーバ」

ネーミングセンスが最悪だ。味を物語っている。そうそう、新作の説明をしていなかったな。このコスプレ喫茶「ミスター」は店長の祖父母様が始めたそうで。そのときは普通の喫茶店だったものの、売れ行きが伸びないので二代目(店長のお父様)がコスプレ喫茶にすることに決めたらしい。よって今では年寄り(初代マスター時からの常連)やらコスプレーヤーやらがごっちゃがえす混沌(カオス)な空間ができてしまった。まあ、コスプレしているだけで実際は何も変わっていないんだが。(「お帰りなさいませ、ご主人様」発言やらおいしくなる魔法やらは存在しない)しかもフロアーで働く人たち(看板娘)がコスプレ好きで衣装も持参してもらっているのでコストもかからない。だから変にマニアックで誰だかよく分からないキャラになっている人もいる。そういうノリで俺たちもなぜかコスプレしている。俺は知り合いの古着屋からもらった執事服、抗菌まな板が巫女服、スポンジが雷神という具合だ。みんなしっかり考えているようで通気性のよい動きやすいものなっている。おっと、話がそれてきたな。それでだ、「ミスター」の看板商品は実はサンドイッチであったりする。しかしある日「絶品であるが、オリジナリティに欠ける」と抗菌まな板が言い出した。まあ、そこまではよかったとしよう。二言目が「私が作って見せます」だ。よって現在に至る。今まで刺身サンドイッチやレバーサンドイッチなどいろいろ作っている(すべて驚異的にマズイ)。しかもいつの間にか俺が味見役となっている。というわけで第一四三作目である。

「どうせ、納豆だろ。めちゃくちゃ臭ってる。よって却下。てか、いい加減諦めろ。」

すると抗菌まな板が眉を下げ子犬のような目で見てくる。

「はぅぅぅ~確かに納豆ですけど……きっとおいしいのでどうぞ!」

「そーよ、はーちゃん。試すだけでも、ね?」

仕舞いに店長までもが加勢してきた。はーちゃんとは俺のことだ。万能包丁だから当初は「ばーちゃん」と呼ばれていたものの、おばあちゃんみたいだからと濁点をとった結果だ。「ちゃん」付けはかなり恥ずかしいのだが、店長の趣味なのでしょうがない。(店のみんなが「ちゃん」付けのあだ名で呼ばれているといううちの店は珍しいのではないだろうか?)しょうがない、店長がああ言っているし食べるか……

「はむ、もぐもぐ、ムシャムシャ」

ふむ、以外にいける――

「kjm\plhbv……」

駄目だった。

「な、何だ? このネバネバぐちょぐちょした食感は? 甘いような辛いような……」

女性二人の前だが、戻していいですか?

「あ~! 多分それは当初納豆だけにしようとしたのですが、辛子入りだったためお子さんでも食べられるようにと生クリームを入れたからだと思われます」

抗菌まな板が目をキラキラさせながら何か言っている。あれ? おかしいな? 体がいうことを聞いてくれない。ん? なんだか厨房以外の光景が目に見えてきた。

「きれいな川が見える……えっ? わたるの?」

「駄目よ、はーちゃん! それをわたったらもう帰って来れない気がするわ!」

「万能包丁さん早く起きて感想を聞かせてください。さもないと――バチッビリビリビリビリ」

ミスターの店舗、いや、ミスターのある町中に断末魔が轟いた。

「――っ! ふはっ! 戻ってこられたぜ!」

どうやら抗菌まな板のスタンガンによる電流のおかげ(せい)のようだ。

「どうしてそんなものを持っている?」

俺がジト目で睨んでみる。

「え? あっこれのことですか? これは熊もイチコロ改造ばいまーちゃん3号で、護衛用です。か弱き乙女ですからね~」

抗菌まな板がか弱き乙女? そして襲われるだと? きっと襲ったやつは精神病患者だ。早く病院を手配してやれ!

「まあ、それはさておき。味の感想だが。見たまんま最悪だ。辛子の辛さ紛らわせるためになぜ生クリームを入れた。辛さを飛ばすとかもっと他にやり方はあっただろう!」

「手元にパフェの残りの生クリームを入れてみただけなのに……苺とかフルーツ入れてみようかな……」

抗菌まな板がアニメの中のキャラクターの用にわざわざあごに手を当て口に出しながら思案する。

「いい加減納豆から離れろ。」

その時だ。「STAFF ONLY」と言う張り紙が付いている裏口が乱暴に開いた。そこから入ってきたのは……

「ウィース! 臭っ!」

「何すか、この匂い!」

「こんな匂いがする店、俺たちがつぶすまでもなくつぶれるぜ」

見るからにヤから始める自由職をしていそうな二人が入ってきた。今のセリフはなかなか屈強そうな男二人だ。そしてその後ろからその二人以上大柄なによく日焼けした坊主頭に顔に生傷と言う白スーツ姿の男が入ってきて二人を黙らせる。にしても確かに今厨房は抗菌まな板のせいで変なにおいはするがそれを面と向かって言うか? というかつぶすって?

「西園寺(さいおんじ)さん! どうしてここに?」

店長が驚いて青い顔をしながら言うと、その白スーツの男が

「どうしても何もあんたが早く決めてくれないからだろ?」

と返した。どうやらこの人が「西園寺さん」らしい。

「店長の知り合いですか?」

奥からスポンジが出てきた。

「ええ、スーちゃん。彼はここの土地を買い取りたいと言っている方よ」

分かると思うが、スーちゃんとはスポンジの事だ。

「その通りだ、嬢さん。ここの店舗の位置はちょうどわしどもの計画をする上で邪魔でね。どいてもらいたいんだ」

その計画は非合法なものだと思った方がよさそうだ。

そして、話すこと数分。話を整理するとつまりこの人は西園寺組の組長さんらしく、もとは自分の組の縄張りに当たるここを取り返したいらしい。一応お金も払うらしいが、だからと言って歴史あるここを捨てられるはずもないって状況だ。一通りの説明が終わり口火を切ったのは抗菌まな板だった。

「三日ください。その間になんとかします。」

「まーちゃん? 店長の許可なくそんなことしちゃ……」

スポンジがあわてて止めに入るが、

「いや、いいよ、スーちゃん。元からもうすぐ店じまいしようかなとは思っていたし。まーちゃんもそれで満足するのでしょ?」

「はい」

「おい、勝手に話を進めんなよ! こっちは待つなんて一言も言ってないだろ」

西園寺の付き添いの片方が声を荒げる。それに抗菌まな板は甘えるような声で

「あら、おじ様方。三日も待てないほどその〝計画〟とやらはうまく進んでいないんですか?」

「何だと黙って聞いてりゃ、この小娘が!」

思いっきり挑発しているため、もう片方の付き添いが今度は声を荒げる。

「やめろ、みっともない。嬢さん、三日だけだからな」

「はい、もちろん」

抗菌まな板の返答を聞くと西園寺さんたちは足早に出ていった。

「何だよ、アイツら言わせておきゃあ好き勝手に言いやがってよぉ。昔あいつらの土地だったとしても今は店長が買い取ったんだから店長のものだよーだ」

こんな子供っぽいことを言うのはスポンジだ。この女と幼馴染とは認めたくなくなる。

「まあまあ、先輩。先輩が何やっても変わりませんから。というか邪魔ですから引っ込んどいてください」

抗菌まな板がなだめる……と見せかけてけなしているな。まあ、スポンジの扱いならこんなものでいい気もするがな。ここで優しい言葉なんてかけたら調子に乗って西園寺組に乗り込んでボコボコになって帰ってくるだろう。

「邪魔じゃなーい! まーちゃん絶対私の事見下してる!」

「あら何ができるというのでしょうか」

「――っで、できる! 何でも言ってみろ!」

うわースポンジ言ってしまったよ。

「なら先輩はこれやってください!」

抗菌まな板は何だか小さな紙切れを取り出した。ここからでは何が書いてあるかが読めない。

「こんなことでいいのか? お安い御用だ。店長~私今日早めに上がらせてもらいま~す!」

店長の答えをもらう前にイソイソとスポンジはどっかに行った。

「お前はスポンジに何をさせたんだ?」

「企業秘密です。それにしても先輩は本当にいい人ですね~」

はぐらかされた。それにしても抗菌まな板は三日間でいったい何をする気何だ?



三日などすぐにたった。スポンジはどうやらまーちゃんからの指示には完璧に答えられたらしい。なんか情報収集したらしい。スポンジは地味に知り合いが多いからな。

「約束どおりきたぜ」

西園寺さんたちがやってきた。

「こんにちは。この店は渡しません。その代わりゴニョゴニョゴニョ……の情報を売りますよ」

なんか抗菌まな板が西園寺さんになにかささやいた。

「じょうさん、どこでそんなこと知ったんだ」

「まあそれはおいといて。確かな話ですよ。ていうか買わなかったら穴がゴニョゴニョゴニョ……なことをばらしますよ」

なんか今脅してなかったか?

「な、何でそんなことを!」

西園寺さんが顔を真っ赤にしている。なんだかかわいそうだ。

「ほら、いやならこの情報で取引しましょう」

悪魔の笑みだ。

「グスグスそれでいい」

西園寺さん泣き出しちゃったよ!

「じゃあこの書類に署名いただいて……はい、それでいいです」

なんかの書類に署名してとたん西園寺さんが大泣きしながら走って行った。抗菌まな板……恐ろしい子。まあ、これでいろんな問題が一瞬にして解決した。これでやっとミスターにも平和な日が……

「万能包丁さん、新作できましたのでたべてくださ~い。今回は……」

どうやら無理そうだ。そりゃそうだよな。こうして春風がそよぐ中またしても断末魔が轟いた。

春号 By杏

2012年04月25日
グロリアス・ワールド

杏   

 西暦二〇XX年、世界中で異形のモノが観測された。その多くが黒いパーカーを羽織り、フードをかぶった人の姿をしている。それらを見た人達は一様に言った――あのモノ達は青い髪をしていて、手のひらから蝶を出す。あれを放っておくわけにはいかない、排除すべきだ――と。さらにその後も目撃情報は増え続け、遂に目撃後に事故に遭い死亡するという事件がおきた。あまりにも信憑性は低かったが、様々な地域の主要都市でデモが起こり、対策をとらざる得なくなった。各国の首脳陣は思い悩んだが、結論を出す日が来て、世界中で通用する法律ができた。――モノを見つけたら、排除せよ。

 それは、あまりにも残酷な法律だった。



紗希がモノを見つけたのは、学校の帰りだった。いつも通りの山手線の品川駅。の、はずだった。しかし、彼女が毎日座っている椅子には黒いパーカーを着て俯く女性。

(あれは……?)

 駅が無人なのを良いことに、少し近づいて顔を窺う。思わず目を合わせてしまった紗希は、思わず声をあげそうになった。自分を真っ直ぐに見つめるその瞳は――澄んだ青色。この時紗希の頭に日本語が通じるのか、という疑問はなく、とにかく話してみようと思った。

「奇麗な目ね」

 とりあえず、思いついたことを褒めてみる。ぽかん、としているので伝わらなかったのかと不安になったが、彼女は口を開いた。

「初めて。褒められた。みんな、貶してばかり。嬉しい。名前は?」

 言葉は途切れ途切れで、最後の言葉は少し発音が違うように感じられたが、そんな事はどうでも良かった。紗希はただ、会話が成立した事が嬉しかった。

「紗希。あなた達って、話せるのね。知らなかったわ」

「サキ。……話せるのは私だけ。サキ、私、殺さない?」

 鞄の中には母親に持たされた小型の銃が入っていたが、使うつもりはなかった。

「うん、殺さないよ。あなたが私に害を為さないなら」

「ガイ? 何?」

「悪いことって事。そうね……今は誰もいないけれど、もうじき誰かがここに来るわ。そしたら、あなたはきっと殺されてしまう。その前に、逃げて」

「ありがとう、サキ。でも、どこに行けばいいの。分からない。私、死んでしまう」

 紗希は言葉に詰まった。確かに、こんな大都会のどこに行けばよいのだろう。かといって、彼女が死んでしまうのは辛い。話せるし、なにより姿形は人そのもの。彼女を殺させる訳にはいかない。

「あなた……そうだわ、名前を決めないと」

「名前?」

「蒼……アオにしましょう」

「アオ。私の名前。ありがとう」

「さて、どこに逃げるかだけど、私の学校が良いと思う。人は多いけれど、隠れるところは多いよ。これ、住所。頑張って……生き延びて」

「分かった。頑張る。明日の朝までには必ず、学校に」

「うん。じゃあ、電車が来るから」



 電車の中で、紗希は考えた。どうして彼女たちは殺されるのだろう。特におかしな人という事はなかった。話すのはつっかえつっかえだったが、それは人間だって同じだ。赤ちゃんの頃から雄弁に話せるわけじゃない。だったら何に問題があるのだろう。もしかしたら、モノの中にも種類があるのかもしれない。しかし、それなら調べてしまえば良い話だ。まさか怖がっているのか? 一般人が気軽に話したと言うのに。

 そこまで考えると最寄の駅に着いたのに、ホームに降り立った。



次の日。いつもより早く登校した紗希はアオを見つけた。

「アオ! おはよう……良かった。無事来れたんだね」

「サキ。ありがとう」

「いえいえ。で、授業中はどうする?」

「大丈夫。体育館倉庫に隠れる。暗いし、誰も来ない」

「そっか。私は三時過ぎまで授業があるから、その後にもう一度来るね」

「サキ。……少しだけ、私の事を」

「え?」

「私、未来が分かる。でも、分かるだけ。その未来は、絶対に変えられない。今日……私、死ぬ」

「そんな……! 突然すぎるよ!」

「仕方ない。ごめん」

「仕方ないなんて! せっかく……友達になったのに! ずっと生きて、一緒にいられると思ったのに! アオのバカ!!」

 思わず、紗希は叫んでしまった。もし――これで見つかってしまったら。そう思うと、走り出さずにはいられなかった。

「サキ……」



 あっという間に放課後になった。しかし、体育館倉庫には向かわない。すぐに帰宅し、母がパートに出ているのをいいことにギターを取り出す。

しかし、あまり良い音が出ない。苛立った紗希はめちゃくちゃに掻き鳴らす。しかし、何かが起こるという事はなく、刺さるような残響が響くだけ。その音はまるで紗希自身を責めているようで――思わず、大型銃を抱えて外に飛び出した。



よく利用する商店街の一角に、人だかりができている。その中心には――アオがいた。アオは羽交い絞めにされ、銃口がむけられている。

「アオ! どうしてここに!」

 大声で叫んだが届かない。人だかりをかき分け、アオの元に辿り着く。自分でも信じられないような腕力で羽交い絞めにしていた男性を薙ぎ払った。

「サキ……ごめん、ありがとう、さよなら。離れて」

「どうして!? 私は……私は、アオが死ぬのは見たくない!!」

 そう叫ぶと、彼女の表情が初めて動いた。そこに見えるのは、確固たる意志。

「だったら、傍で手をつないで。二人で生きていたいって、強く願って」

 彼女のいうとおりにした紗希は、体温の高さに驚いた。しかし、そんな事はいっていられない。アオの手をぎゅっと握り締め、願う。――アオと、ずっと一緒にいたい。

 銃口が向けられているのが怖くて目をつぶっていた。すると、二人を取り囲んでいた町内の人が驚きの声をあげたのが分かった。紗希がおそるおそる目を開けると、アオの二つに束ねた青く長い髪があらわになっていて――銃が消えていた。

「あれ?」

 銃を構えていた男女は目に見えておろおろしている。彼らの頭上にはアオの髪と同じ色の蝶が舞っていた。隣にいる彼女の顔には疲労の色が見える。アオは、自らとその親友のために、自分の力を使ったのだ。

「アオ!?」

 不意に彼女はもたれかかってきた。その髪は美しい黒に変わってゆく。澄んだ青色をしていた目も、闇夜のような黒に変わった。

「紗希……私、人間になれた。一緒に、生きよう」

 紗希の目から涙があふれる。少女達の美しい友情に、周りの人々も皆涙を流していた。



毎日のように紗希の元にやってくる野次馬が消えた三日後の朝、彼女は信じられないものを見た。学校へ向かう道の途中、自分と同じ制服を身にまとい、黒く長い髪を二つに束ねた少女。

「アオ!?」

 半分疑問形で呼びかけると、彼女は振り向いてこういった。

「はじめまして、音川葵です。もうちょっと生きてみる事にしました。これからもよろしく!」

春号 Byさつき

2012年04月25日
進む君と止まった僕の縮まらない隙を何で埋めよう?(2)(back




沈黙を破ったのは、少女だった。少女は、傷ついた自らの手足をさすりながら、ボソッと呟いた。

「……何よ。……嗤えばいいじゃない」

「笑わないわ」

「偽善者」

「うるさいわね。そこのお墓にはあなたの名前が刻まれているし、それに、そこに手向けられている花を見なさい」

少女は、私を一瞥し、

「見りゃあいいんでしょう」

お墓の前にしゃがみこんだ。

「名前は……あってるわ。花は、何? これは菊? 確かに菊はお墓に置くものだけど」

「花束の中」

私は目を閉じて、短く返した。

***

愛へ

あんな形で、永遠に会えなくなってしまったのは、僕はとても悲しいです。僕は、喧嘩のことについてもう許しています。今も、ホームページは更新しています。命あることのありがたみを日々感じながら、部活しています。

追伸:部長と繭(まゆ)は付き合い始めやがった。リア充爆発しろ

清水聡史

***

少女は、読み終わって、最後にクスリと笑ってからこちらを振り向いた。私には分からなかったが、何かおもしろいことでもあったのだろう。

「愛?」

「……はい、よく、わかりました」

言うと同時に、少女の目からは一筋の涙がこぼれた。少女は、自嘲気味に話し出した。

「私が全部間違ってたんですね。もちろん、今のことも、部活のことも……。私、繭とはすごく仲がよかったんですけど、繭はずっと怒ってる感じだったんです。だから、部活内でいざこざがあるのかって聡史に聞いたんですけど何も言わなくて。で、ちょっと八つ当たりしてしまったんです。追伸で分かりました。私の懸念していた類のものは何もなかったんだって」

「つまり、勘違いだったわけね」

「はい。……あの、あなたは、死人の言葉を生きている人に届けることはできるんですか? 私、成仏する前に勘違いを解きたいんです」

私は考え込んだ。もちろん、できなくはない。ただし、それを毎回しているとキリがないので禁止されているのだ。

けれど、この件に関しては私は全力を尽くしたいと考えた。

「ええ、できるわ。そして……私ももう成仏するわ」

きっと禁止令を破ったら私は職を失うだろう。けれど、もういい。もし生きていたなら私はもう百十九歳なのだ。死ぬのには若くない。もう、十分だ。

私は、その言葉を少女の前で口にすることによって腹をくくった。

「じゃあ……おねがいします」

私はすぐに清水を追いかけた。特別な操作によって、清水はいまから二日後、少女の言葉を知ることになるだろう。

そう、少女に告げた。そして、続けて少女に言った。

「もう、いいかい?」

少女は、今までのツンとした表情を完全に消し去り、ふわりと微笑んだ。

「もう、いいよ」

私はその答えを聞くと、すぐに、帽子を頭上に掲げた。これは、成仏するための汽車を呼ぶ合図だった。

「愛。一回飛んでみ? 羽の使い方が分からないと向こうで苦労するらしい」

「は、はあ……」

愛は言われるままふわりと宙に浮いた。普通に、何の支障もなく飛べている。しかしそれは分かっている。愛の意識を他のところに移すための細工だった。愛がふわりふわりと辺りを飛び回っている間に、私は丁度来た汽車に飛び乗った。そして、いつも持っている円盤型通信機の電源を入れた。

『番人、聞こえる?』

『お前、いいのか。もう成仏しても』

『あ、なんだ、知ってたの。ならいいや。私、もう十分だなと思ったの。だって生きてたら百十九歳だよ?』

『そうだな』

『でね、さしあたっては、愛を二代目除霊師にしてほしいなって』

『除霊言うな。除霊はニュアンス的に悪霊退散のイメージだ』

『はいはい、それはいいから。だから、そういうことで上に通しておいて。今から黄泉(そっち)に送るからさ』

『わかった。が、お前、最後まで人使い荒いな』

『はいはい、一言多い。じゃ』

円盤を汽車の中のレコード盤にセットし、エンジンを入れる。高音の歌声が聞こえてきた。

二代目のことは、ついさっき決めた。私は今までいろいろな人を成仏させてきた。その最後を飾る少女が、二代目になるべきだろう。

「愛、行くよ」

「あ、はい!」

愛が乗ると同時に汽車を思いっきり加速させた。ふと後ろを見ると、お墓に清水が来ているのが分かった。

「あの、咲(つぐ)実(み)さん?」

「おっと、なぜ本名を知ってるのかはともかく、何?」

「実は、聡史の手紙、持ってきてしまったんですけどいいですか」

「あ、そのことなら構わないよ。愛はこれから私のあとを継ぐからね」

愛はなんのことやらわからない、という顔をしていたが、それ以上私は何もしゃべりたくなかった。そして、これ以上下界にいたら成仏するのが怖くなるから早く黄泉に着きたかった。

***

「お、ばんに~ん! 愛つれてきた! ていや!」

黄泉についてすぐ、黄泉の番人にドロップキックをかました。昔からよくやってきたが、きっとこれが最後だ。

「ってえ! クソ、お前覚えてろよ」

「残念ながら私は今日で身体を失くすので仕返しができません」

「なんだと! じゃあ今仕返す」

「無理だね! 川渡っちゃうから」

「番人はつり橋を上げ下げする権限を持っていたんだがもう忘れたのか」

「へんっ覚えてますよ」

「じゃあどうして川渡れると思ったんだろうな? ん?」

久しぶりに番人と言い合いをしたら、楽しかった。思えばこの百年間、楽しかったのは番人とのこうした言い争いだった。

やいやい言い合っていると、いつのまにか愛への、仕事の説明は終わっていた。

「咲実さん!」

「あ、できたらその呼び方やめて欲しいな~。呼びなれないし」

「えっと、じゃあ、先代。いろいろ、ありがとうございました。私、これからがんばります」

「あーはいはい、そう形式的なことはいいよ。これから何回も失敗したり、後悔したり、傷ついたりするし、何度も泣くと思うけど、それは全部愛の、成長の糧になるから、大切にするんだよ。あと、番人の言うことはちゃんと聞くこと。じゃないと、私が天から見ていて呪います」

「はい、肝に銘じておきます」

そして愛はあっけなく下界に消えた。あたりには、生前どこかでかいだ優しい香りが漂っている。

「これは……バラ?」

そうだ。私の家の庭に咲いていたバラの香りだった。そして、それに気づいたと同時に、以前まで使えなかった嗅覚が戻ってきていることに気がついた。

「番人、なんかわからんけど、バラの香りがする」

「お前そろそろいなくなるんじゃないの? 愛を呪うのは一向に構わんが、俺に支障がないようにしてくれ」

「それは無理かな~番人への嫌がらせには未練があるしね」

「お前な……」

番人は、始終私と目を合わせなかった。きっと彼は彼なりに悲しがってくれているのだろうと思った。でももし十九歳で自殺して、そのまま除霊師にならなかったら、誰にも悲しまれずに死んでいたのだ。番人は、私の恩人だ。

「番人!」

だから、照れくさいけどちゃんと言う。

「今まで、ありがとう!」

ふとふいた春風が、バラの香りを運んでいった。番人はかすかに微笑んだ気がした。そして、再び吹いた春風に私の嗅覚も運ばれていく。唯一残っていた感覚と、意識とともに。

END

春号 Byさつき

2012年04月25日
進む君と止まった僕の縮まらない隙を何で埋めよう?

さつき


私は、今日もビニール傘を差して見慣れた墓地をさまよっていた。傘に特に意味はない。だってもう私は死んでいるから。

「この仕事も九十九年目か……あと一年で百賀じゃん」

私はこの墓地周辺で、さまよっている霊を成仏させる仕事をしている。別に、霊が見える特異体質を持ち合わせていたわけじゃない。ある、親切な黄泉の番人が、十九歳で自殺した私にこう言った。

「君はまだ若い。死ぬにはまだ早すぎる。だから、特別に、しばらくこの世にいれるようにしようね」

そして私は、この職を与えられた。最初は手間取ったり失敗したりしたけど、今はもうほとんど失敗しない。今まで、たくさんの人を成仏させてきた。いろいろな人がいた。未練がある人、生きている家族が気になる人、死んでもなお憎悪に燃えている人……。私はもう死んでいるから見かけは死んだときから変わっていない。でも、心の面ではたくさん成長したと思っている。

「生きてたら百十八歳かぁ~。全く、信じられないな」

フラフラと歩いていると、あたりを彷徨う半透明の少女を見つけた。足取りがおぼつかない。まだ亡くなったばかりなのだろう。

「ターゲット発見、だね」

いきなり話しかけはしない。話しかけても、変に警戒されるだけだ。解決の糸口が見つかるまでじっくり観察して、何が少女の御霊(みたま)をこの世に引き止めているのか調べるのだ。それから話しかけても、全然遅いことはない。

「やれやれ、手間はかけさせないでよね~私結構忙しいからね~」

腰に手を当てて伸びをしながら、私はそう呟いた。

***

一週間後、私はいくつかの情報を得ていた。もちろん自分では何も調べられないので、番人と連絡を取って調べてもらっていたのだが。少女は十四歳で、死因は交通事故、家族関係や友好関係は良好だった。

「憎悪とかはなさそうだね。安心、安心」

霊体(れいたい)とはいえ、怪我はするのだ。憎悪に燃えた人たちはときに刃物を振り回すので、とても危険なのである。まあ、普通に生きているより体は軽いからよっぽどのことがない限り大丈夫なのだが。

「一回、声かけてみようかな」

手間はかからない気がしていた。きっと、自分の死に気がついていないのだろう。一言、「あなたは死んでいる」と言いさえすれば、たぶんミッションクリアのはずだ。死ぬと視覚・嗅覚・痛覚・触覚以外は失われるから、大体の人は自分の死に気づくはずなのだが、まあこの少女は鈍感なのだろう。

「あのー、もしもし?」

声をかけてみたら、返事がなかった。近くまで行ってみると、少女が眠っていることに気がついた。

「あちゃー寝ちゃったか。これはまずいな」

自身の経験だが、一度寝てしまうと起きるまでには一年くらいかかる。もちろん起こしてくれる人がいなければ、だが。一年も少女に付きっきりになるのは勘弁してもらいたい。けれど、私は、少女を起こすことができない。少女がそうであるように私だって半透明である。おどかしてしまうかもしれない。今から三十三年前も同じようなことがあって、起こしたために失敗してしまったから、起こすのは気が引ける。

「あーあ、面倒なことになった。まあ、しょうがない。起きるまで待ちますか」

***

一年は、うざったいほどにのろのろと過ぎ去っていった。その間に、私の元には膨大な情報が押し寄せていた。それらはルーズリーフに綺麗にまとめられていたが、さすがに量が多いのか、幾枚かが閉じきれずに風に飛ばされた。

「全く。手こずってるわけじゃじゃないってあれほど言ったのに、『謎の解明がんばれよwwwww』とか、ふざけんなよ……情報はもういらないんだって……」

きっと今も情報収集に忙しい番人のいる空の彼方をにらみつけつつ、届いた書類に目を通す。ぱらぱらと見ているうち、興味深い情報が目に留まった。久しぶりに、ちゃんと目を通してみることにした。

『資料元:観察 毎週お墓参りに来る男の子(清水(しみず)聡史(さとし))は、毎回「せめて友達に戻れていたらな」と呟いている』

はて、そんなこと言っていたかな……と、私は記憶を手繰りよせた。全く思い出せない。

「ちきしょう、思い出せねえええ!」

ああとか、ううとか、解読不能な単語を呻きながら思い出していると、なんとタイミングのいいことに清水が現れた。嬉しい反面、いやな予感が募る。

「これは……も、し、か、し、て」

心当たりがあり、すぐさま書類の、付箋の貼ってある紙を読んだ。

「清水くんが来る日付、バグらない程度にいじったから。自分でも呟いてるの確認してみ。あと、こういう大事な書類もあるので全てに目を通すように。どうせ暇なんだろ?」

「すいませんでしたッ心から反省しております」

私は即座に土下座した。

***

「今日は来るつもりじゃなかったんだけど……思い立ったが吉日、ってやつかな」

清水はまずそう呟いた。本人に気づかれているということはバグが発生しているということだ。あとで言っておかなければならない。もっとも、既に上のほうからガミガミ言われているとは思うが。

「まあ……いつも言ってるけど、あの喧嘩のあとでこうして永遠に会えなくなったのは寂しい。うん……。どうしてこうなっちゃったんだろうね。しかも、寂しいとか思ってるのは僕だけだろうしね。全く、どうして人って死ぬんだろうね。もちろん生きている意味も見出せはしないと思うけど……人が死んだらその人の家族や友達は、取り残された感覚なんだよな。その人の声も聞けないし、顔も生前の写真とかでしか見ることができないし、二度と新しい思い出も作れないし……その人のいたコミュニティからその人が消えることで、なんというか、成分がなくなる、みたいな……。たとえば、そう、牛乳からたんぱく質や脂質が消えたら、その物体は牛乳ではない別物になるだろ? そんな感じなんだよな。だから、自分の周りの人のために死なない、みたいな……うん、僕はわからないけど、こないだの心霊部はそれが議題だったんだ。愛はどう思う?」

私は、このあたりから聞くのをやめた。私の、少しの良心がものすごく痛んだ。私が死んだとき、残された母や父や、数は少なくてもいい人だった友達は、こんなことを思っていたのだと改めて気づかされた。

「もう、さっさと本題を言ってくれればそれでいいのに」

無理やり笑って茶化したけれど、空しさだけが墓地を反響した。

***

それから数日後、少女はやっと目覚めた。晴天の日だった。墓地に隣接した道には、喪服を着た人たちの行列ができていた。きっと、誰かが亡くなったのだろう。無事成仏することを祈りながら近くの木にもたれた。清水が来なかったらもうここでこの件を片付けただろうが、私は少女を成仏させるのがいやだった。なぜなら、少女と清水を仲直りさせたかったからである。清水の、少女へのあの言葉はそのあとも長く続いた。それで、すっかり清水に感情移入してしまったのである。

「それにしても、あの女の子、愛(めぐみ)っていうらしいが、ひどいやつだ。全く。いくらイライラしても絶交とはひどすぎる……」

私は毎日携帯している例のルーズリーフの束を力任せに地面にたたきつけた。なんでも、喧嘩の原因は勘違いだったらしい。少女は部活の、部員募集を真面目にやらない清水に腹を立て、清水は、少女のいないところでチラシを作ったりホームページを更新したりと仕事をしているのに怒られたのが気に入らなかった。そして喧嘩がはじまり、ついに少女は「もう、絶交! 部活もやめて!」と叫んだという。

「愛が一方的に悪いんだけどな、これ……」

どうやったら少女に謝らせられるか私には全く分からなかった。清水の話によると少女はお嬢様育ちだったらしく、私にもかつてそんな友達がいた。が、その友達は絶対謝らないことで有名だった。同じタイプの人間だとは信じたくないがその可能性は高いだろう。

「あーわからんっ! どうすればいいんだああ!」

そのとき、ふと手向けられた花が見えた。

「あれは――うん、いける」

解決の糸口が見つかった。

***

「あ、聡史?」

清水がお墓参りに来た日、少女はもちろん彼に気づいた。しかし少女は、そう言ったっきり黙りこんだ。それもそうだろう。少女は今清水と喧嘩しているし、それよりも何よりも、少女の声は清水に届いていない。

「あの、さーとーしー?」

あの様子からして、やはり自分が死んでいることに気がついていないのだろう。

「話、聞いて! お願い!」

そこで、少女はふと、悟ったような目つきをした。

「そっか。私たち、もう友達じゃないことになったんだっけ……じゃあ、無視されても当然だよね」

どうやら、自分の言ったことも忘れていたらしい。私は一瞬、少女を成仏させるのをやめようかと思うほど激怒した。

「でもね、私が悪かったの、知ってるから。反省してる。本当に、ごめんなさい。今までずっと、後悔してたんだ。でね、せめて、友達に戻って、ほしいな……なんて、厚かましいんだけど」

謝った。(私の中では)わがままお嬢様だった彼女が謝った。これは、私にとって嬉しいことだった。

「ねえ、」

ふと少女が清水に手を伸ばした。まずい。少女の手は清水をすりぬける。私はとっさに叫んだ。

「あなたはもう死んでいるわ!!」

少女は振り向いた。

「なんですって!?」

「あなたは、もう、亡くなっているのよ。ほら、私、半透明でしょう。半透明な人が見えるということは、あなたも半透明だということ」

少女は目を丸くして、下を向き、黙り込んだ。そしてしばらくの沈黙のあと、思い出したかのように叫んだ。

「死んでないっ! なんなら見なさいよ。生きている人間に触れたらいいわけでしょう?」

そう言いながら少女は清水のほうに手を伸ばした。

「あっ!」

とっさに手を伸ばしたが遅かった。少女の手は清水をすり抜け、体は前のめりになった。

「助けて! こける!」

しかし、この距離だと届かない。せめて顔を強打するのは見まいと目を閉じたとき、しゅるしゅるという音が聞こえた。

「蔓?」

少女の体を蔓が覆っていた。それだけではない。少女を、清水からどんどん遠ざけていた。

「いや! 聡史と仲直りするんだから! 離して!」

少女はもがいた。その顔は、痛みをこらえてゆがんでいる。どうやら蔓のトゲが刺さっているらしい。

「愛! 動くと余計に刺さるよ! いくら死んでいても、怪我はするものなの!」

反射で私は叫んでいた。

「でもっ! 仲直り……!」

そこで、ふと、気づく。解決の糸口があったではないか。

「愛! 清水聡史は、もう許してるの! もうもがくのはやめてこっちに来なさい!」

「嘘だッ! あんたなんて信じるもんか! 大体、あんたは急に出てきて私を死人呼ばわりして、それで仲直りをも邪魔するのね! 初対面のぶんさいで!」

「確かに初対面かもしれない、けど、私は嘘はつかないわ! 信じて!」

「うるさい! 何をしようと勝手でしょ!」

「ええ、勝手よ! でも、それで成仏できずに苦労するのはあなたよ!」

「だから死んでないって!」

「じゃあさっきどうしてすりぬけたのかしら?」

「っ……あんたの勘違いでしょ。あんたの目は節穴なの?」

「そっくりそのまま熨斗つけてお返しする! こけかけたのはどちら?」

間を空けずに怒鳴っている間に、蔓は少女を完全にもとの位置に戻した。沈黙が続く。私は何もなかったかのように書類に目を落とした。



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真夏と朝(2)(back




そんな風に過ぎていった日々。まあ、途中からは高校受験で忙しくなってそんなに遊ぶことができなくなってしまったけれど。それでも楽しくて仕方がなかった。高校は別々のところへ行った(二人とも一緒の高校を選ぼうと思ったりする性格ではない)が、ネットでは連絡を取り合っていたし、さっきも言ったとおりナギのブログを見たりした。高校でも話くらいはするクラスメートもできた。似たような趣味の人も増えてそこそこ楽しかった。今度の受験は殺伐とした雰囲気があり、私も釣られるように必死になって大学受験の勉強に精を出した。もちろんその間も、ナギとは連絡をちゃんと取っていた。ナギの高校もクラスメートの何気ない会話が受験関係の話になって、ただならぬ空気が漂っているらしい。そして、センター試験直前、

――汀 ひいらぎは二度と私と話すことはなかった


 ナギは塾からの帰り道、雪でスリップし、歩道へ突っ込んできたトラックにはねられた。彼女はヘッドフォンで音楽を聴きながら歩いていたらしく、トラックにまったく気がつかなかったようだ。彼女の母親が目元を赤く腫らしながら教えてくれた。そして、そのヘッドフォンと聞いていたCDを私にくれた。ナギは今、植物状態で病院にいるが、回復は見込めないのだそうだ。私は一心不乱に勉強した。今手を止めたら私は二度と立ち上がれなくなる、そう言い聞かせて体が壊れる限界まで机に向かった。

「大学へ行ったらまたナギとCDショップへ行ってゲームを作って映画でも見に行ってそれから……」

呟いた言葉は、決して実現しないと分かっていても溢れてくる希望だった。そして三月、受験の結果発表があり、私は無事大学へ入学することが出来た。母は喜んでくれたが、私は生きている意味を見失ったような気がした。私を支えてきた希望もただただ空しい物へと成り下がった。虚無感が私を支配し、何に関しても無気力になった。入学式までの約一週間で、私は骸骨のような有様になるくらい弱っていた。精神的にも肉体的にも当に限界は超えていたのだ。

 大学の講義にはきちんと出ていた。というかそれくらいしかすることがなかった。サークルにも入らなかったし、講義が終わると一番に大学から出て行く不思議な奴扱い。全く構わなかったけど。

 大概大学の図書室に行ったりしていたけれど、それも一瞬だったし、私のことを誰も知らないんじゃないだろうか等と思ったりしていた。けれど、違ったのだ。私のことを観察していたおかしな人が大学内に一人いた。

 彼は突然話しかけてきた。

「今日は講義が午前で終わるんだね」

確かにそう。今日は週に二回の午前で終わる日。しかし何故そんなことを聞いてくるのだろうか。相手は講義で何回か見たことのあるような気がする顔だった。名前は知らない。

「ええ、まあ……そうですけど」

「あのさ、よければお昼でもどう? 俺も今日午前までなんだ」

「いいですけど……貴方誰です?」

軟派(なんぱ)な人というのはこういう人のことかな、とか思いながらも承諾。なんとなくナギと雰囲気が似ているから。私に話しかけてきてくれたこととか。正直私はギリギリの状態だったが、外向きの対応でなんとかこう聞いた。

「ああそうか、なんて話しかけようか悩んで忘れていいたよ。僕は、大槻(おおつき) 賢治(けんじ)、よろしく」

「私は小早川 鈴音、よろしくお願いします。ところで大槻さん、」

「なにかな?」

「何で私の講義が午前で終わると知っていたのですか? 後、何故私を昼食に誘ってくれたのですか?」

「あー、えーとだね、僕の思い違いでなければ、小学校の時六年間クラスが一緒じゃなかったかな~。それで僕、大学入ってからまだ友達いないから一人だけ知っている人に話しかけてみようと思って」

「あー……そうでしたっけ」

確かにそんな気がする。あー、いたな、大槻賢治。眼鏡かけているから全然分からなかったけど……。

「あの、眼鏡はずしてもらえます? 一瞬で良いんで」

「ん、いいよ」

そういって彼は眼鏡をひょいとはずした。

「あー、思い出しました。確かに貴方は私の元クラスメートです」

「それはよかった!」

彼は眼鏡をかけてにひっと笑った。

「それじゃあ講義後にホール前で待ち合わせしよう!あとこれ、」

彼はアドレスや番号の書かれたメモを私に渡した。

じゃっ、といって彼は走り去っていった。

ドサッ 私は荷物を取り落とした。

「ナギ……」

強烈なフラッシュバック。ナギと行ったCDショップ。初めて作ったゲーム。

「ナギ、ナギ、ナギ……」

ああナギだナギがいた。ナギがナギがナギが!


どうやら私は走っている。むせび泣きながら走っているようだ。肺が潰れるような痛みに襲われている。大学を飛び出し転びながら走り続けた。走って走って走って走って――


気がつくと私はナギの家の前で立ち尽くしていた。電車で一時間ほどの距離を走って? 無理なはずなんだけれども私はやってのけたらしい。別に誰も褒めてくれないだろうけど。それよりナギだ。家に帰らなくちゃ。また走る。

 二分ほど走って我が家に到着。かばんから鍵を取り出し家に入る。母さんが驚いた顔をしていたけれど構わず自室へと向かう。そして、ナギのヘッドフォンを首にかけ、あのCDショップへ向かった。

 店に入ると脇目も振らずゲームのサントラを置いているコーナーへと向かった。ナギが最後に欲しいといっていたはずのCDを探す。あった。それを引っつかんでレジへ向かう。会計を済ませると家へ戻りながらCDを開ける。持ってきたCDプレイヤーにセットし、再生する。流れてくる音にナギを見つけようと必死に聞く。そうすることでナギを感じようとした。いつの間にか家まで戻ってきていて、私は部屋の布団へ倒れこんだ。もう足が動かない。無理だ。私は止まってしまった。二度と立ち上がれない。

 その後、大槻に連絡だけ入れると私は大学を中退し、冒頭のようなかろうじて生きているような状態になってしまった。

 毎日毎日CDを聞いてバイトして絶望して虚ろな瞳を宙に彷徨わせ、

堕落した毎日を送る。さて、私はこの先変われるかどうか分からない。もう四年間もこんな状態だから変われる望みは薄い。それでも私は死なない。ただただ生きる。変われるかもしれないという希望をともして。


そろそろバイトだ。でもその前に、タオルケットを干さないと。


希望とともに虫干しだ。





                

真夏と朝

                       風船犬 キミドリ



 真夏日、私はタオルケットに包まっていた。暑くはなかった。ただ、外の世界に息が詰まった。



 時に聞く、友達は必要なのか。

ありきたりな質問だ。“人は一人では生きられない”よく言われる言葉。しかし、この言葉を鵜呑みにするのは些か軽薄ではないだろうか、と空中に向かって問いを吐き出す。また部屋の中が息苦しくなった、気がする。

 この部屋は実家で私が小学校に上がってから大学を中退した今でも常に私の部屋だった。必要最低限のものしかない、それでいて整理整頓という言葉からは恐ろしくかけ離れた部屋。そこで私は半日以上を過ごしている。就職氷河期の今、私は就職に失敗し、絶賛無職中。

 一応近場のコンビニでバイトをしている。だから厳密にはフリーター。シフトは深夜のみで昼間はインターネットで一応就職先を探している。大学はそれなりに名の知れたところへ行かせてもらっていたので少しばかり有利かもしれないが、音沙汰なし。大体インターネットで就職先を見つけようとすること自体がおこがましい。

閑話休題。私は今まで何度も友達を作る機会に恵まれた。ただし、私はそれらを全て、あえて無視した。馴れ合いの友達は要らなかったし、私を理解してくれる人も少なかった。そう、少なかった。だから、今回はその私が関わった数人の人々と、ここまで堕落する前の私の話でもしてみようか。





 話は十年前にまで溯る。ちょうど中学一年生のころだった。地元の中学で、私が住んでいたのは田舎だったからクラスは学年で二つ。

基本的にクラスメートは皆知り合いだ。私を除いて。別にいじめにあっていたわけではなく、むしろ私がクラスメートを無視していた。私は付け入る隙を与えなかった。持ち物を奪われることも、机に落書きされたことも私の空気が許さなかった。

 しかし、クラスに一人はいる面倒見の良い――私にとってはお節介なクラスメートによって私は“小早川(こばやかわ) 鈴音(すずね)”と、クラスの担任に呼ばれる以外に“スズちゃん”と数人から渾名で呼ばれるようになった。

 特に気にならなかったので私は“小早川さん”から“スズちゃん”となった。安直と無難は紙一重。今回は無難であろうか。

 さて、そんな私はパソコンに結構な興味があった。CとかJavaとか、そういう技術関係。いわゆるSE――システムエンジニアという職に着きたいような気がしていた、と思う。こんな曖昧で申し訳ないが、十年前でしかも自分のことをどんどん忘れていっているこの頃なので、自分のことなのに思い出も想像。もしかしたら違うかもしれない。まあそんなに本編に関係がない話であって、つまりは私の興味がパソコンにあったということが重要だ。

 そんな当時ではそこそこ珍しい趣味を持つスズちゃんは、ずっと一人だったわけだ。唯一話しかけてくれる面倒見のいい子に私は学んだことを少し話してみた。顔がクエスチョンマークになるんじゃないかと思うくらい“疑問”な顔をされた。私はその後二度とその子にはこの話をしないでおこうと思った。

 それからしばらくした日の放課後、私は手始めに何かプログラミング言語の一つでも覚えようかと参考書を読みながら通学路をてくてくと歩いていた。と、そのとき――

「あれ? その本私も持っているよ!! もしかしてパソコンの技術系に興味持っているの? あはっ、仲間が見つかった! いや~あの番組の朝の占いは凄いなあ、運命ってやつだね! そうそう、私の父さんがプログラマーなんだー。だからこっち方面に興味もってさー。あ、自己紹介がまだだったね、私は中学一年二組の汀 ひいらぎだよっ。汀はさんずいに一丁目の丁。ひいらぎは平仮名だよ。よろしくっ!!」

 長い髪をポニーテールにしている元気な子だ。なんか勢いよくまくしたてられて自己紹介もしてくれた。私がよほど呆気にとられた間抜け面をしていたせいか彼女は、

「んーと、そちらさんはどなた? 多分一組だよね?」

わざわざ気を遣って話を振ってもらった。

「あの、えと……、は、はじめましてっ!」

あれ、私はこんな恥ずかしがり屋みたいな性格じゃないぞ。ただちょっとびっくりしているだけで……

「ほらほら、恥ずかしがらずに! お名前をどうぞ!」

違うってば!!

「えと、一組の小早川 鈴音です」

「へ~え~、んじゃあこばっちゃんだね!」

「へ? 」

「ん、だからこばやかわ、でこばっちゃん」

苗字のほうでとったのか。

「こばっちゃんと呼ばれたのは初めてかな」

「じゃあ今までは? 」

「スズちゃんでした。クラスの子が決めてくれて……」

「んー、私的にはこばっちゃんのほうにビビッときたかな~。」

「ビビッと……」

なんだか楽しい子だ。

「じゃあ、私も何かあだ名で呼んでもいいですか? 」

「もちです!」

えーと、じゃあ……

「ナギでどうでしょう?」

同じように苗字からとってみた。

「お~、いいじゃあないですか~!ナギかぁ~!」

やたらと大騒ぎされました。なんでだ……。

「気に入ってくれたようで何より」

「つーか、あれなわけです。私、もともとひいらぎっていうコードネーム? みたいな名前なわけですよ。『こちら楠(くすのき)、柊応答せよ!』みたいな?」

「なるほど……」

なんか例えはよく分からないけど、ようはもともとあだ名みたいだからあだ名をつけられたことがあんまりなかったっていう話か。

「私もそんな感じでして、中学あがるまではずっと小早川さんだったし……。なので、ありがとうございます!」

「うん? べっつにお礼されるようなことしてないよ? 私があだ名で呼びたかっただけだからさっ!」

そういうものなのか。ていうかこの子はほんとに元気だな。私とは大違い。こんな根暗で陰気な私とは……。

「あれ? もうこんな時間か~、今日は解散ですな。あ、これ……」

そういってナギはメモを取り出し、なにやらさらさらと書くと私に渡した。

「私の連絡先。自宅とケータイの番号とメアド。できれば近々連絡ちょーだい!」

じゃっ、といってナギは走り去っていった。方向が私と一緒だ。ありきたりではあるが、嵐のような子だったな。





 と、一人目の友人、汀(なぎさ) ひいらぎとの出会いは大体こんな感じだった。今、彼女と話せたらどんなに気が楽になるか計り知れない。

 それでも私はもう、彼女と話すことはできない。彼女は大学入試直前に交通事故にあったらしい。今は病院で植物状態。今の私には会いに行く気力もない。最後にあったのは、受験の前に二人で合格祈願しに近くの神社へ行ったときだ。あのときでも半年以来の再会だったかな。高校は別々だったし。まあメールのやり取りはしていた。彼女は受験間際までブログの更新をしていたので大体の近況は伝わってきた。

元気そうではいたけれど、彼女のことを私は何にも分かってなかった気がする。そう思うと今でも思い悩み、自己嫌悪にさいなまれ、部屋はますます息苦しくなる。早くバイトの時間にならないか、ならないよな。人間は時間の感じ方を変えることはできるが、時間自体の流れを速くしたり遅くしたりはできない。あくまで感覚でしかない。それにしてもバイトまでの三時間が鉄球のように重い。今まで私は何をして過ごしていたのだろう。読書か、ネットサーフィン。駄目人間まっしぐら☆……テンション上がるかなあとか思って☆つけてみたけれど、ただ単にウザさが上がっただけだった。あーあ、また自己嫌悪スパイラル。気を紛らわすために話の続き――ナギとの中学時代ともう一人の友人――というにはいささか語弊がある気がする――の話でも。





 ナギとは、その後も仲良く付き合い続けた。彼女は私に本を貸してくれたり、ナギの父さん直伝のプログラミングの技術や、ナギの趣味であるトランジスタ技術についても教えてくれたりした。正直、トランジスタはよく分からない。有線から無線に変えるのが凄まじく手間だということだけ理解できた。

 そんな風に私達は趣味を介して繋がり続けた。たまには近くのCDショップへ行って音楽を聴いたりした。特にナギはゲームのサントラを好んだ。そういう曲を聴くとゲームのシチュエーションが浮かんで楽しいらしい。近々自分でも作ってみたいのだそうだ。

「でもさ~私には美的センスっつーの? そういうセンスがないからね~」

だから、ゲームのほうを作ろうと思ってる、と彼女はにひっと笑いながら言った。その後、何度もナギから相談を受け、簡単なRPGを作り上げた。そのときの達成感は、今までの人生で感じたことがないくらいの大きさで、私はキャラクターがなにやらしゃべっているのを見ながら涙ぐんでしまった。

「あれあれ? もしかしてこば、泣いてんの~?」

ナギがにひにひ笑いながら言ってきたので私はさっと涙をぬぐい、

「ナギだって口元だらしなくなっているよ! 今にも蕩けそうな顔しているよ!」

そう言い返すとナギのようににひっと笑ってみた。


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月夜猫

2012年04月24日
月夜猫作

『君の香り、ボクの香り、そして異世界』
『君の香り、ボクの香り、そして異世界2』
『君の香り、ボクの香り、そして異世界3』
月夜猫はもうもはやホラー&グロ作品専門みたいになっていますがきっと普通の作品も書けるのです。多分。。
癒しの声はもう届かない

no name1

2012年04月23日

2012年04月23日

「繋ぎ」

昨日が見せたあの夢を、君と僕を繋ぐ糸にしよう。
どんな音楽よりも勝る引力を、それは持っているはずだから。

偽物の本音に惑わされ、右往左往歩き続ける。
握りしめた愚問からしたたる赤い血に、そうっと口付け、
雨音のリズムが、もうここは終わりだと告げる。

昨日が見せたあの夢は、僕と日々を無理につなぎ止める。
どんな言葉よりも強い引力で、それは明日を運んでくるから、
僕は逃げも隠れも引き離せもできやしない。
誰か、誰か! 助けてよ!
振り返ったのは、紛れもなく、君。

君の声に励まされ、無我夢中に進み続ける。
握りしめた疑問からしたたる冷水に、そうっと口付け、
誰かの声援が、まだ行けると急かし続ける。

時間が見せたあの夢は、僕と過去を着実につなぎ止める。
どんな言葉よりも強い引力で、それは君を運んでくるから、
僕は拒むことも嫌がることもできやしない。
もっと、もっと、近くに!
手を伸ばすたび、僕の足は進んでしまう。

君と一緒にいるために僕は夢の手を取った。
そしたら、いつのまにか君を抜かしていたんだ。
もう後ろには戻れないんだね。
君をつなぎ止めるのはあの日見た夢。
君と僕を引き離すのも、あの時の希望。
なんて、なんて可笑しいんだろう。

過去が見せたあの夢を、いっそ壊してしまおうか。
どんな物より大切な君も、希望も、崩れ去って。
その後僕の手に残る物だけで、生きて行こうか。
一つ、一つ。君に問う。
僕は、こんな僕は、今のままで、良いの?

魅烏

2012年04月22日

風船犬キミドリ

2012年04月22日

みるく

2012年04月22日

2012年04月22日

深智

2012年04月22日

さつき

2012年04月22日

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