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3学期 by池辺りあ

 
  特別 ~~『無地のキャンバス』プロローグ
池辺りあ 


 美術室の隅のキャンバスは

 いつまで経っても無地のまま


「先生。ここに置いてあるキャンバス、どうしていつまで経っても真っ白なんですか?」

 問いかけたらやっぱり、先生は微妙な顔をする

 私は知ってる

 このキャンバスは、先生の特別なモノ


 先生が閉めようとした窓から

 冷たい冷たい、風が吹く

 揺らされた黒髪は、私の心の揺れと同じ


「ずっとですよね。私が入学してから、ううん。多分、その何年も前から」


キャンバスの上を、私の指が歩く

 ゆっくりと

ゆっくりと

 先生の大事なものに、私の跡を残そうとする


「ずっとですよね。私が入学してから、ううん。多分、その何年も前から」


 先生の特別になりたい

 先生の特別になって、先生に『好きだよ』って言われたい

 先生の特別になって、先生に抱きしめられたい

 先生の特別になって、先生と、キスをしたい


 遊ばれた髪を耳に掛ける

 出来るだけ、女らしく

 出来るだけ、出来るだけ、妖艶に

 先生の心を、こちらに向けたくて

 ……無理だって、分かっていても


 先生に目線を移す

 真っ直ぐと、先生を見つめる


 先生の表情(カオ)が、痛いと言っていた

 やめてくれと、言っていた

 思い出させないでくれと、言っていた

 先生の目が、揺れていた


 でも。

ここで視線を逸らしたらきっと

私はここから進めないままだ


「そのキャンバスは、俺にとっての特別だから、かな」


先生。

特別って、なんですか?


 それは、いつまで先生の特別のままなんですか?

 それを、先生はいつまで胸に抱えるつもりですか?



 ――私は、先生の特別には、なれないんですか?



「…………そうですか。特別、か」


 先生。

 先生の特別になりたいです


 このキャンバスの人よりも

 特別な人に、なりたいです

先生の傷を癒せるような存在になりたいです

 それ以外はもう、何も要らない

 求めないから


 先生。

 先生の特別に、なりたいです



 ……無理だと、分かっていても





  ――後書き

 間に合いませんでした。出そうとしていた『無地のキャンバス』が、全くもって間に合いませんでした。ということで締め切り当日、即興でプロローグなる詩を書きあげた感じです。原稿を落とすのは、ここまで皆勤(たかが一年)の作者のprideが許しませんでした。
 テスト勉強よりも必死になった気がします。そして今、隣の友人も同じくらい必死でPCと戦っております(それを余裕で上から眺める私。私が彼女の立場だったらウザがってると思う)。
 次号くらいに本編を載せられればな……と思ってはいるのですが、もう自信がありません。だって、ものすごく頑張ったはずなのにまだ六ページしか進んでいないのですもの! なので、期待はしないで下さい(誰もしない気もしますが)。もし次号でもまた、詩やら短編小説やらが載っていたら「また間に合わなかったんだな」と憐れみの視線を向けてやって下さい。
 これが終わったら取りあえず、月イチ課題に取り掛からねば。
ん? 別に宣伝じゃありませんよ。良ければそちらも手に取ってみて下さいね~、みたいなことではありませんよ?…………良ければそちらも手に取ってみて下さいね~。
 はぁ、疲れた。どうしようもなく疲労しております。エネルギー使い切った……。今日は早く寝ようかな。とか言いながら結局夜更かししてしまうであろう、池辺りあでした。



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