TOTAL: 94992 - TODAY: 5 - YESTERDAY: 263

3学期 by青い怪物


   星
青い怪物
女「ねえねえ男、さそり座のさそりのお腹辺りに見える赤く光っている星みえる?」
と大空の星々を二人で見上げながら女は男にたずねた。
男「見えるよ。たしかアンタレス(Antares)だよね?あの星がどうかしたの?」
女「そう。さそり座で一番明るい星だよ。男はあの星がどうしてアンタレスって名前になったか知ってる?」
男「知らないな~。女は知ってるの?」
女「最近本で読んだんだ。アンタレスの近くにもう一つ赤く見える星があるのわかる?」
男「うん。見えるよ。あの星がどうしたの?」
女「あの星は火星(Ares)なんだけど、アンタレスと火星が明るさを競い合っている様に見えるから『火星(Ares)に対抗(Anti)するもの』っていう『Anti‐Ares』が由来って書いてたわ」
と女は自慢げに話す。
男「へ~、星の名前にそんな由来があるんだ。すごく明るかったり他のものに対抗したりして、なんだかアンタレスって女に似ているね(笑)」
女「男!!いったいどういう事それ!?」
女は男を問い詰める。
男「女はいつも明るいよねっていう話だよ」
女「絶対それだけじゃないでしょ?」
男「それだけだよ~」
と男はケラケラ笑いながら言った。
女「んじゃあ、男はどうなの?男も私と同じくらい明るいと思うけど?」
首をかしげながら男にたずねる。
男「う~ん…」
男は空を見上げて星を探す。
男「でも、さそり座の中でなら僕にはあっちの星の方が合っているのかな」
女「どの星?」
男「さそりの尾の辺りにある明るい星」
と星空を指さす男
男「え~と、名前は確か…」
女「シャウラ?」
男「そう!!シャウラ!シャウラ!」
女「たしかさそり座の中で二番目に明るい、さそりの針を担う星だっけ?」
男「うん。アンタレスは少し明るすぎて僕には合わないかなって。だから、アンタレスに比べて控えめなシャウラの方が僕にはちょうど良いのかなって思って」
男は少し照れくさそうに言う。
女「控えめか、たしかに男らしいね」
男「シャウラを見ているとなぜだか落ち着くし」
男はずっと星空の一点を見続ける。
女「シャウラばっかりじゃなくて、せっかくだからアンタレスとかほかの星も見なさいよ!」
少し頬を赤らめながらつぶやく。
男「気が向いたら見るよ」
と男は女の変化に気づかない。
結局僕はいつもアンタレスの様な物を見ているんだよな…と心の中で思いながら。

時間が経つのも忘れて二人は空を見ながら色々な話をした。
東の空が藍色になっていく。月が消えてく。
女は男に少しだけ触れて合図した。
二人は立ち上がり、もどかしいけどいつまでもこんな関係が続けばいいな。とお互いに思いながら帰路についた。
目の前に広がる夜と朝が混ざり合う、藍色の空を目に焼き付けて。
※さそり座は夏の星座です。



コメント
name.. :記憶
e-mail..
url..

画像認証
画像認証(表示されている文字列を入力してください):